10nスケールで世界を見る
分子の世界を理解するためにはμm(マイクロメートル)やnm(ナノメートル)といったスケールをイメージすることが必要です.しかし日常生活でこのようなスケールのことを意識することはありません.そこで,10のn乗メートルごとに自然界を見ていくムービー「Powers of Ten」を講義の始めに上映し,私たちの身体のスケールから素粒子のスケールまでを眺めてみました.
このムービーの内容を収めた書籍が販売されています.私がみつけたのは今から十年以上前,アメリカの大学購買部の科学書コーナーでした.なんとなく手にとってページをめくってみて気に入ったことを覚えています.今もときどきページをめくってはそれぞれのスケールのことを想像して楽しんでいます.日本語にも翻訳されています.
- 作者: フィリス・モリソン,フィリップ・モリソン,チャールズおよびレイ・イームズ事務所,村上陽一郎,村上公子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 1983/10/30
- メディア: 単行本
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ムービーに対する学生からの印象も良かったようです.以下,出席カードの自由記入欄から.
人の手をものすごく小さいところまで見たのがすごかった.
最初のスクリーンを使う授業が面白かったです.
インフルエンザ
先週金曜日のNコースの化学でも新型インフルエンザの話題を採り上げました*1.ここではWHOや国立感染症研究所が公表している感染者数と志望者数を紹介したのですが,その後,情報が更新され続けています.今回は昨日夕刻のデータを紹介しました.
インフルエンザの仕組みについても解説しました.今のところ豚の体内で異なる種類のウイルス遺伝子がシャッフルされて新型ウイルスが登場したと考えられており,その過程が非常に低い確率ではあるがゼロではないものであったことを説明しました.
インフルエンザの話がおもしろかったです.
豚インフルエンザはすごく低い確率から生まれたんだなと思いました.
化学とエネルギー
教科書第2章(p36)からが相当します.ここからが本題.出席81名(出席カード枚数).「今回は化学式がまったく登場しない」と宣言して講義を始めました.しかしこれに対して意外なコメントが・・・
まだ化学式がでてきていないので理解できてます.
化学式が出てこなくて良かったです.
化学式が出てこない方がよい,というコメントが返ってくるとは思いもしませんでした.しかし化学式の出てこない化学の講義は今回までです.
- エネルギーとは何か,どのようなエネルギーがあるか
- 運動エネルギー,位置エネルギー,熱エネルギー,化学エネルギー,電磁エネルギーなど.それぞれ例を挙げて説明しました.p38.
- 分子の運動エネルギー
- 分子の平均運動エネルギーの尺度が熱です.p39.
- 熱エネルギー
- 1 calの定義,[cal]と[J]の関係を説明し,水の温度を上昇させる場合に必要な熱エネルギーを例に計算方法を解説しました.また,講義のおわりにカロリー計算の問題を出題しました.p43.
- 電磁エネルギー
- さまざまな種類の電磁エネルギーについて紹介しました.ラジオ波,マイクロ波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,γ線,宇宙線.また,波長とエネルギーの関係についても解説しました.p47.
便利になった社会の背景には,電磁エネルギーの利用があると分かった.
- エネルギー保存の法則と熱力学第一法則
- 反応の前後でエネルギーの総量は保存されるという自然科学の大原則です.p51.
エネルギーが無くならず常に変化している事に驚きました.
エネルギーの法則があり,反応前と反応後では全エネルギーは変わらないということがわかった.
- エントロピーと熱力学第二法則
- 系の乱雑さの尺度.p52.
高等学校の物理でほとんどのエネルギーはやったが,エントロピーについてはやっていなかったのでおもしろかった.
今回の授業でエントロピーを初めて知りました.まだ少し理解できていないです.
僕の部屋のエントロピーは増大しまくっています.エネルギーについてよくわかった.
- 爆発卵
- 人類が電子レンジで調理した2番目の料理だそうです.
講義を終えて
- 講義全般
- 3回目ですが約80名を対象に進める講義の速度や難易度をどのあたりに設定するのが良いのかはまだ迷う点ではあります.コメントにはちょうど良いというものが多いので,このペースで続けて行くことにします.
程良いペースでわかりやすかったです.
今日の授業はだいたい理解できた
授業は分かりやすくて興味が持てるし,スピードもちょうどいいと思う.
身の周りの生活を例にたとえて授業してくれるので,とてもわかりやすい.
物理の内容とかぶっている部分だったので分かりやすく理解できた.
高校までの授業と違って様々な法則や計算の裏側が学べるのでおもしろい.
- エネルギーについて
- エネルギーというもの*2は目に見えません.理解するのが難しいように説明するのも難しいものです.こどもの頃に遊んだブランコとか(運動エネルギーと位置エネルギー),坂の途中に停まっている自動車(位置エネルギー)など,身近な例を引っ張り出してきて説明することにしました.これはうまく行った様子です.
エネルギーについて楽しかったです.
エネルギーについてよく理解できました.
高校ではならわなかったエネルギーを知ることができて良かった.
エネルギーについて理解が深められてよかったです.
エネルギーの話はけっこう好きなので,今回は楽しめました.
すぐ身の周りにもエネルギーに関わることがたくさんあることが分かったので,これから意識していきたい.
- 改善を要する点
- 約80名の学生を収容できる大きめの部屋が割り当てられたのは良いのですが,それゆえに不便も生じています.
とても寒かったです.
朝の1時間目は空調の調節が難しいようです.クーラーが強めに設定されているようですので,後ろの席の方は寒いときの調節をお願いします.
少し,字が小さくて見づらいです.
もうちょっと大きく書きましょう.
スライドの文字が小さくて内容が理解しにくかったです.
今回のスライドでは細かい文字の中に重要な情報はありませんでした(たぶん).重要な文字情報があるときは拡大貼り付けするなど工夫しますのでご安心ください.
マイクで声を拾えていたりいなかったりでとても聞き取りにくかったです.
後ろの方に座っていて少し聞きとりにくいところがあった.
ワイヤレスマイクを使ったのですが音量が少し足りなかったようです.次回調整します.
最後の小テストの解説をしてほしいです.
OKです.それでは次回講義の最初の時間に解説しましょう.
次回予告と自習課題
次回は「原子の構造」(p60)に進みます.しかしここには高校化学で扱う内容が多く含まれているため,各自に自習して来てもらい,講義の際には簡単に扱うにとどめることにします.教科書を読みながら語句を確認して行く形式のプリントを配布し,次回の講義の際に提出してもらうことにしました.
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www.tnojima.netwww.tnojima.net
- 作者: MollyM. Bloomfield,伊藤俊洋,岡本義久,清野肇,伊藤佑子,北山憲三
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1995/03
- メディア: 単行本
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*1:http://d.hatena.ne.jp/hrmoon/20090508
*2:「物」ではなくて「もの」,あるいは「こと」という意味の「もの」