新型インフルエンザウイルス
新型インフルエンザが国外で広がりつつあります.インフルエンザウイルスが機能する際に重要な役割を果たす蛋白質が2種類あります.ノイラミニダーゼとヘマグルチニンです.どちらもウイルス粒子の表面に存在する分子です.毎月1種類ずつ「今月の分子」を紹介しているサイトMolecule of the Monthは,2009年5月の分子に「インフルエンザのノイラミニダーゼ」を選んでいます.
そこで今回の講義では本題の「化学とエネルギー」に入る前に,新型インフルエンザの電子顕微鏡写真,インフルエンザの感染機構,インフルエンザを構成する蛋白質,インフルエンザ検査キット,について簡潔に紹介しました.以下,参考にしたリンクです.
なおMolecule of the Monthではヘマグルチニンも2006年4月に「今月の分子」として紹介しています.
ウイルスへの感染といった生命現象も,精密な立体構造を持った生体高分子の働きという化学の角度からとらえることができます.また検出にも分析化学の技術が利用されています.
化学とエネルギー,講義内容の記録
出席13名.前回,前々回の出席者が全員残っています.前回の出席票自由記入欄に,単位換算のやりかたについて質問してきた学生がいたので,講義のはじめに簡単な比例計算法をつかった換算法を紹介しました.
- エネルギーとは何か,どのようなエネルギーがあるか
- 運動エネルギー,位置エネルギー,熱エネルギー,化学エネルギー,電磁エネルギーなど.それぞれ例を挙げて説明しました.p38.
- 分子の運動エネルギー
- 分子の平均運動エネルギーの尺度が熱です.p39.
- 熱エネルギー
- 1 calの定義,[cal]と[J]の関係を説明し,水の温度を上昇させる場合に必要な熱エネルギーを例に計算方法を解説しました.p43.
- 電磁エネルギー
- さまざまな種類の電磁エネルギーについて紹介しました.ラジオ波,マイクロ波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,γ線,宇宙線.また,波長とエネルギーの関係についても解説しました.p47.
- エネルギー保存の法則・熱力学第一法則
- 反応の前後でエネルギーの総量は保存されるという自然科学の大原則です.p51.
- エントロピー
- 覆水盆に返らず.系の乱雑さの尺度です.p52.
動画上映
可視光線以外の電磁波は肉眼で見ることができません.しかし化学反応や物理反応を引き起こす確かなエネルギーを持っています.その一例として電子レンジを採り上げました*1.
大きめのタマゴを電子レンジでチンすると・・・・
危険なので絶対にやらないように!*2
国民生活センターのサイト内に,ニワトリのタマゴを電子レンジで加熱した場合の例が紹介されています.
リンク→http://www.kokusen.go.jp/douga/20070906_2_news/n-20070906_2_low.html
講義を終えて
化学式が一回も登場しない講義でした.教科書ではエネルギー保存則とエントロピーはパスして良い項目とされていますが,自然科学を理解するうえで非常に重要な概念なので採り上げました.その結果,少し内容が圧縮された感じを残したようにも感じます.
出席カードのコメント紹介
某動画サイトに電子レンジにファービーつっこむのとかありますよね.あとCDつっこんだりとか.ぱーんってなるやつ.
電子レンジを使ったいたずら実験はいろいろな人がやっていて,その様子をインターネットで公開しています.人形を入れるのは見ていて楽しいものではありませんが,CDを電子レンジにかけたときに起きる現象は興味深いものですね.他にも電球を入れたときの反応もおもしろそうです.ただし電子レンジは調理器具として販売されている器具ですので,自宅で実験するのはやめましょう.
卵の実験はずっと見てみたかったので,見れてよかったです.
自宅では絶対にやらないように!
卵を電子レンジに入れただけなのにすごく大きなエネルギーが生まれるということに驚いた.カロリーの定義が分かりづらい.どうして食べ物とかにカロリー表示されているのか?
電子レンジの中の卵には新しいエネルギーは生まれません.マイクロ波として与えられた電磁エネルギーが水分子をゆさぶり熱エネルギーとなり,それが殻の内部の圧力を高くするのです.食べ物にカロリー表示されているのは,その食べ物が持つ化学エネルギーを使って身体を動かしたり温めたりするからです.これについては次回説明しましょう.
おでんの卵も,レンジで温めるときに注意するようにと言われたことがあります.卵は殻の有無に関わらず危険なのですか.
ゆで卵をレンジで加熱すると,マイクロ波のあたり具合によっては白身が熱で硬化するかもしれません.そうなった段階でさらにマイクロ波が与えられ続けると,内部の気圧が高くなり,その力が硬化した白身を破壊する際に爆発する,というような可能性が考えられます.温めるなと言われているものをわざわざ温めるのはやめておきましょう.
波長とかエネルギーは目に見えないものなので,あいまいですががんばって理解したいです.
光をはじめ電磁波は粒子としての性質と波としての性質を併せ持っています.このあたり,とてもおもしろい領域なのですが,ここをとりあつかうと化学の講義が1年間では終わらなくなってしまいます.エネルギーについてはかたちをかえて化学のあちらこちらでこれからも出てきますので少しずつ慣れて行きましょう.
化学と物理は違うものだと思っていましたが,エネルギーの話をきいてつながりがあることがわかりました.
分子の物理学,というような面も化学にはあります.化学と物理学とは重なりあった領域を多く持ちます.
今回の授業でエネルギーをやって,高校時代の化学や物理で習ったことを再度思い出しました.また,おもしろい海外の実験の映像が見れて良かったです.
大学入学時に選んだ専攻につながる化学や物理学というとらえかたをすると新しい面が見えてくるかもしれません.
電子レンジの実験で目がさめました.
おはようございます.
エントロピーはよくきくことばでしたが,初めて意味を知りました.たまごは気圧の変化によって爆発するのですね.
何となく耳にしている言葉でも正確な意味を知らない,というようなことが珍しくありません.化学の講義では「それはいったい何なのか?」考える機会を設けて行く予定です.
ケータイとレンジの波長が同じとはとてもおどろきました.全くうごいていない生命活動を行っていない物にもエネルギーは存在するのでしょうか.たとえば1階にある机やいすとか.
いろいろな電子機器が同じ領域の波長を共有しています.コンピュータを無線LAN経由でインターネットに接続している場合に,電子レンジのスイッチを入れると接続速度が下がる場合があります.これは近い波長の電波を使った結果生じる干渉作用です.
すべての物体は何らかのかたちでエネルギーを持っています.1階に置いてある椅子や机でも,たとえば近くの床に穴を開けた場合を考えると,地下室の家具を破壊するという「しごと」ができることになります.これは位置エネルギーを持っているからです.木材を食べて生きる小さな虫にとっては,1階に置かれた木製の椅子や机もエネルギー源になります.
カロリー計算は他の私立大学の試験で出されたので苦労したのを思い出しました.
次に何かの試験問題でカロリー計算に出くわした時には楽勝で解答できるようになってください.
「エネルギー」という言葉を聞いただけで,やる気を奪われてしまったけど,講義を聞いていると今まで理解できなかったことや,初めて知ったこともわかりました.化学は苦手だけど,先生の授業でいろんなことを知って少しでも克服したいです.
やる気にならない対象の多くは,見たり聞いたり触ったりして身体で感じられないものです.想像力を総動員してなんとかイメージできるようにしてみましょう.「位置エネルギー」と言われても感覚的に理解できないかもしれませんが,子どもの頃にブランコで地面から高く上がった瞬間の感覚というものは思い出せることでしょう.あの手この手で感覚に訴える方法を試して行こうと思います.
位置エネルギーのボールの具体例についてなのですが,坂の上と下に位置するまったく同じボールは位置が違うからエネルギーの差があるということなのでしょうか.
そのとおりです.坂の上と坂の下にある2個のボールは,それぞれ異なる「位置エネルギー」を持つのです.
紫外線と赤外線の名前の由来を知って今まで「赤外線は赤」っていうイメージに踊らされていたことが発覚しました.生卵をあたためると爆発するけどゆで卵はしないですよね.
名前に意味あり.赤外線は赤色の外側,紫外線は紫色の外側,です.ゆで卵の件は電子レンジをぶっとばすほどの爆発を起こすことは無いでしょうが,白身の内側に残っていた水分が強く加熱されて圧力が1気圧以上になる可能性もあるので,どうしても電子レンジでチンしなければならない時には箸を刺して穴を開けておくことをおすすめします.
ムービーがとても楽しかったです!
今後もいろいろとみつけてきて紹介します.
物理でエネルギーが嫌いだったのですが,ムービーによって興味がわきました.またムービーを授業にとりいれてほしいです.
タマゴが爆発して電子レンジが吹き飛ぶという例が果たして「エネルギー」の説明にもっともふさわしいものだったかどうかは不明ですが,これが物理現象に興味を持つきっかけになたというのであれば良しとしましょう.
n(ナノ)→μ(マイクロ)にするというような単位計算が苦手です.少数苦手!
それでは次回,ここを攻略する方法を考えましょう.
次回予告と自習課題
次回は「原子の構造」(p60)に進みます.しかしここには高校化学で扱う内容が多く含まれているため,各自に自習して来てもらい,講義の際には簡単に扱うにとどめることにします.教科書を読みながら語句を確認して行く形式のプリントを配布し,次回の講義の際に提出してもらうことにしました.
リンク
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