Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

化学講義(17)pHと緩衝溶液:教科書上巻終了

生命科学研究や医療検査で用いられる緩衝溶液のしくみを解説しました.そのまえにpHの復習.

前回の講義に対するコメント質問その他の紹介

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前回はモル濃度の計算演習をやったのでした.この結果,モル濃度がわかったというコメントがドッサリと返ってきたのでした.モル濃度習得プリントをつくった甲斐がありました。

前回の講義録参照→第16回(2009-10-14)

化学トピック(1)オリオン座流星群

今夜がオリオン座流星群の観察ピークです.1年後もピークが訪れると考えられていますが,月明かりがジャマをして観察できそうにありません.その次は70年後です.雲がどいてくれることを願うのみです.

流星群、超キレイだったです。星座はオリオン座しかわからないです。

星座占いって本当に当たるんですか。

私はscientistです.別方面の方におたずねください.

オリオン流星群、見たいです。帰りがけにみようと思います。

流星群がんばって見ます。

オリオン座流星群見たくて見ていますがまったく見えてません。今日雲がなくなったら今日こそ見たいと思います。

星は好きです。しかし、私の家は首都高の近くなので、空気が汚くて見えません。残念です。

郊外に出るんだ!

すい星の核が水やメタンで、太陽から熱エネルギーをもらっているなら、いずれなくなってしまうのでしょうか?

なくなってしまうのです.

化学トピック(2)酸性河川中和事業

最近話題の「八ツ場ダム」.その上流には世界で最初に建設された「酸性河川中和施設」があります.硫酸酸性(pH 1.2)の火口湖から流れてくる酸性の河川を石灰で中和し,下流にダムや堤防などを建設工事可能にしつつ,農業用水などにも使えるようにしようという考えでつくられた施設です.

pH (p319)

pH=-log10[H+]

で表される数値がpHです*1.25℃において純粋な水ではpH=7になります.

生体系の緩衝作用(p327)

呼吸とか排尿といった動作が,体内pHをコントロールしているしくみを紹介しました.

人間の素晴らしい機能がよくわかった。

緩衝作用の実際

ビーカー内の純水1 Lに,10 mol/Lの塩酸1 mLを加えると,[H+]=10-2 mol/Lとなり,pH=2となります.このときのpH変化量は5になります.

しかし,これと同じことを酢酸-酢酸ナトリウム緩衝溶液に行っても,pHは0.02程度下がるだけです.この違いがどのようにして生じるのかを,平衡条件,すでに与えられている酢酸のpKa,化学種の量的関係,に基づいて導き出しました.

ここでは計算にいくつかの近似を施して行きます.その細かい手順を説明したプリントを配布しました.その内容に従って,pH変化を追いかけて行きました.

この計算については,計算好きからは好評だったのですが,計算嫌いからは不好評でした.ただし,これまでのような「高校化学のようだった」というコメントは(ほとんど)ありませんでした.

おもしろかった。

計算複雑でした。というか、原理そのものが複雑なんですね。

高校よりも深い内容だったので、初めて知ることもあり、おもしろかった。

久しぶりに平衡の計算して楽しかった。

何か分かったかも!!

おもしろかった。

以上は好評だった側からのコメント.

高校のときの求め方とだいぶ違うので、難しく感じる。

今日は難しかった・・・・・。

少し難しかった。

以上,「やりがいがあった」と感じておくことにしましょう.

後半45分は何語を話していたのでしょうか。化学実験のときにやったような気がしますが、全く理解できませんでした。

という意見もありました.電離平衡にlogの計算が混ざって悪夢のような45分だったことでしょう.でもね,ときどきそういうことが起きるのが,大学なんですよ.

来週から有機化学

有機は苦手だったので少し怖いです。

有機がすごく楽しみです。

有機も楽しみにしています。

高校のときは単に反応例が書かれていて,それを覚えてオシマイということが多かったかもしれませんが,次回からの化学講義では「それはなぜなのか」を解いて行きます.「考える有機化学」,乞御期待.

その他のコメント

平衡のスライドの文字が細かくて見にくかったです。

すみません.配布プリントをそのまま投影したものなので,読みにくかったところを見直してください.

復習しておきたいです。

予習よりは復習の方が高効率です.

微積はとても苦手なので使わない方向で進めてくださるとありがたいです。

これは今回の講義の冒頭で「『高校の化学レベルだ』というコメントが毎回あるので,こうなったら次回から難易度をグイっと上げて,微積分つかいまくりの専門化学にしてやる!」という冗談を言ったことに対するコメントでしょう.

ご安心ください.年間を通じて微積分が出てきた(くる)のは,7月にやった「放射性同位元素の壊変」のところだけです.

リンク

www.tnojima.net
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*1:厳密にはちょっと違うんですが,今回はこうしておきます