Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

大学1年生の担任の先生っていうお仕事 #mbd2012 #mbd2013

北里大学の専任教員が担当している業務の一つに,「クラス主任」があります.ようするに高校までの「担任の先生」の大学バージョンです.

私も2012年度と2013年度の2年間,このお仕事をやりました.

国内大学では,学生を学年ごとに何「クラス」かに分け,それぞれの「クラス」に専任教員を割り当てて「担任の先生」業務を任せる,っていうやり方をしているところが増えています.少子化とグローバル化の時代,大学が教育をマジメにやるようになって,こういう制度が広まっているのです.

っていう制度がどんなものなのか わかるのは,担任制度をシッカリやってる大学の在学生とか卒業生くらいのものでしょう.私が1991年3月に卒業した大学には担任がいなかったし,私の長女がいまお世話になっている大学にもそういう制度はないし.北里大学では昭和時代からコレをやってきたらしいけど.

っていうわけで,今回は北里大学の「大学1年生の担任のお仕事」について書いておくことにします.以下,「担任」ってなっているところは,北里大学では書類上は「クラス主任」っていう名称になってます.

●私が受け持った「担任」のお仕事:1年生を2回

私は2012年度と2013年度に海洋生命科学部1年生の担任を受け持ちました.1年間だけ受け持って,2年目からは海洋生命科学部の先生にバトンタッチする,というしくみになっていました*1.今年度は受け持ってません.

海洋生命科学部には毎年毎年1年生が200人弱入学してきます.ソレをA組からF組の6クラスに五十音順に分けて行った4クラス目「D」を私は担当しました.

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↑2012年度は苗字が「す」から「た」のあたりの35人.

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↑2013年度は「た」から「の」のあたりの33人.

●担任のおしごと

2年間でやった業務を並べると次のようになります.

  • 4月上旬の「クラス主任ガイダンス」
  • 年に2回の面談
  • 年に2回以上のクラス会開催
  • 学外実習同行
  • PPA総会で保護者対応
  • 成績指導
  • 生活指導
  • 保護者対応
  • 適切な部署へのフォワード

●具体的に何をやるのか:年中行事的なもの

4月上旬の「クラス主任ガイダンス」

前期授業期間スタート前の1週間,入学式の行われる4月最初の1週間の間に,「クラス主任ガイダンス」っていう時間(1コマ)があって,ココで受け持つクラス全員と初対面となります.

このとき最も重要なのが「クラス委員」の学生2名を選ぶことです.クラス委員っていうのは,小学校とか中学校とかの「学級委員長」みたいなアレの大学生版です.

クラス委員は1年間にわたってクラス運営のアレコレをやってくれる学生なので,ここで適切な人物を選べるか選べないかが,その後1年間の担任業務が順調に進むか苦難に満ちた日々になるかを決めます.

また,勉学にしろ大学行事にしろ,クラスのノリとか雰囲気とかがクラス委員のキャラと関係する面が多いので,受け持ったクラスの進級率とか学生生活満足度とかにも影響します.

っていう重要な2名を,初対面の三十数人の中から90分間で選ぶわけです.

私の担当した2年間は大変幸運なことに2名以上の学生が立候補してくれて,その後のクラス運営を積極的に進めてくれました.また,クラス委員をサポートしてクラス運営を順調に進めてくれる学生も現れました.

2012年度のクラス委員の りょーま & タッキー,彼らをサポートしてくれた つっつー,2013年度クラス委員の はずむ & マツコ,彼らと実質的に一緒になってクラス運営を進めてくれた ぶりはまち,感謝してるぜ愛してるぜ☆ *2

クラス委員を決めると同時に,大学生活の説明をして行くわけですが,アレコレと言われたって分かるわけないので,2013年度は「とりあえずコレを読め」プリントを作って配布しておきました.

年に2回の面談その1

新年度が始まると,5月上旬までに全員と面談を行います.

面談でインタビューする必要項目は大学から指定されており,それが記入されたアンケート記入シートも大学で定められているので,クラス全員に前もって渡しておいて,ソレを受け取って記載内容について質問したりコメントしたりするところから始めます.

特定の魚に強い興味を持っている学生っていうのがいて,その魚をいかに愛しているか,その魚がどれくらいステキなのか,その魚のことを毎日どれくらい考えているか,というような熱い語りを10分間きいて終わっちゃう場合なんていうのもありました.

きみの好きな魚のハナシじゃなくってさ,きみのハナシをきかせてよ

面談が終わると,その内容を手短に専用の台帳に記入して,記録を残します.

時間割の都合とか連休とかがあるので,休み時間を使って1人につき10分で進めました.

コレをやりながら顔と名前を一致させて行きます.ココで覚えておかないと,その先に学内で会っても誰だかわかんなくなっちゃいます.誰だかわかんなくてもOKっていう性格ならそれでもいいでしょうが,それじゃつまらない.

面談予約表を作っておいて記入させるわけですが,自分がどこに予約を入れたのか忘れているとか,間違って記憶しているとか,そういうのがちょくちょくあります.大学生に成り立ての頃って,自分自身のマネジメントできないのがデフォルト.

学外実習引率

海洋生命科学部1年生は大型連休期間中に,新江ノ島水族館(江ノ島近く)+海洋研究開発機構(横須賀)の見学に行きます.コレにも担任が同行するキマリになっていました.

朝の小田急線 片瀬江ノ島駅集合で,新えのすいを見学して,バスに乗って横須賀に移動,海洋研究開発機構を見学して,相模大野までバスで戻って来る,というルートでした*3

PPA総会で保護者対応

5月下旬から6月上旬の日曜日のどこかで「PPA総会」が開催されます.コレは保護者と教員との懇親会です.都内のホテルの広間を借りて開催されます.

担任として受け持った学生の保護者がココに参加される場合には,その学生の近況,っていうか面談やった知ったこととか印象とか,を報告します.

っていうのをやるためには,全員との面談を5月上旬までに片付けておかなければならないわけです.だから10分間ずつになっちゃうわけです.

年に2回以上のクラス会開催

年に2回以上,「クラスの親睦を深めるイベント」を何か企画することになっています.

ありがちなのが学内BBQ場でBBQ大会っていうパターンです.私は2年間とも前期と後期にコレをやりました.

BBQは「買いに行く」「食材を準備する」「火を起こす」「食べる」「片付ける」といったアレコレがあって,適当に作業を分担できるのと,特殊な才能が必要ないのと,費用がかからないのとでオススメ企画です.大学からはクラス会開催の費用補助が出るんですが,参加する学生をタダにするとなるとBBQが手頃かなと.

年に2回の面談その2

後期になると受け持ったクラスの学生全員の前期単位取得状況が事務から届くので,その結果を学生一人一人に手渡ししつつ,デキの良い学生には失速せぬよう,そうでない学生には上昇するよう指導します.コレが2度目の面談になります.

もっとも,前期単位取得状況は本人のところにも届くので,面談に来ない学生もいます.

●具体的に何をやるのか:ランダムに発生するアレコレ

成績指導

とりあえず2年生に進級させるためにアレコレやるのも担任の仕事です.

クラス委員に連絡をとって,サボりがちな学生のクビ根っこを押さえて連れてきてもらって説教したり,掲示を出したり,メールを送ったり,Twitterでカツを入れたり,っていう調子でアレコレやります.

生活指導

サボりがちな学生がいたら直ちに知らせるようにと全員に言っておき,「あいつ また来てなかったー」な学生についてはメールを送るなりSNSでメッセージを送るなりして指導するのも担任業務です.

流されちゃってどうにもならない系の学生で「なんでもします なんでもします どうか助けてください」みたいな場合には誓約書を書かせたり*4
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保護者対応

ドロップアウトしそうなタイプの学生の保護者から連絡が来ることがあり,「だらしない息子を何とかしてください先生・・・」的に泣きつかれることもあります.

少々手荒なことをやっても構いませんか? 手段が無いわけではないのですが」

から交渉を始めて,OKってなると,クラス委員とか肉体ガッシリ系の男子とかに「体育会的指導」を頼むことになります.サボり系男子がプロレス技を掛けられて教室に引きずり込まれて行く,なんていう場面も出て来るわけです.

進路変更問題

入学したものの別のことをやりたくなった,っていう学生が出るのは珍しくありません.他大学の他学部を受験するためとか,他分野の専門学校に入学するため,といった理由で退学手続きを取った学生もいました.

保護者に電話連絡をして承諾をとり,各種事務手続きをお願いすることになります.

ココでも大学指定のフォーマットで事情を説明する文章を書くのが担任業務になります.

適切な部署へのフォワード

メンタルな問題を抱えた学生は学生相談室に連絡を取ってバトンタッチします.

健康上の問題を抱えた学生には自宅近くの医療機関に行くように指示します.

こういう問題は医療従事者でなければわからない問題なので,シロウトが勝手なことを言うわけには行かないのです.

カウンセラーに状況説明したり,カウンセラーに状況説明するためにどこまで説明してOKなのか本人と相談したり.

プライバシーの関わる問題はテキトーにはできないのです.

基本的なお勉強,がわからないっ! と言ってる学生には,学習サポートセンター(ASC)に行って個別指導を受けるよう指示します.

基本的な考え方は「フォワードする」です.

専門科目の持ち込み

レポートの構成がまとまらないとか,化学に関係する専門科目の意味がわかんないとか,有機化学とか生化学とかの先生がつかまらないとか,そういう状況になると,とりあえず私のところに持ちこんで解決する,という人々がいて,進級した後もそういう付き合いが続いています.

そして彼らは雑談をしに来る

アレコレとネタを見つけては雑談をしに来る人々もいて,せっかく来るのを追い返すのもアレだし,っていうわけで,

●良好な関係が現在まで続く

1年間で担任業務をバトンタッチするわけですが,彼らが進級した後も良好な関係が続いています.進級に伴うキャンパス移動が無いので,学内でもちょくちょく見かけるし.

2012年度D組

2012年度D組は,A組からF組までの6クラスの中で,もっとも団結力があるクラスのようで,他のクラスが2年進級以降の集まりを開かなくなって行った中,2年生,3年生,4年生に進級した後も彼らは学内BBQ大会をやっていました.
何度かBBQに誘ってくれて,日程が合ったときには参加しました.


最後は4年生に進級した9月で,スケジュール的にコレが卒業までに最後の集まりになるだろうとのことでした.
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次は卒業式で送り出すのが最後の仕事です.

2013年度D組

2013年度D組はクラス委員+準クラス委員の男子と焼き肉を食べに行ってロクでもないハナシをしたものです.
ひんぱんにクラス会をやってきたわけではないようですが,2年,3年のときに何度か誘われました.
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●担任業務が終わった今も

担任業務が終わった今も,就職が決まったとか,研究室が決まったとか,TOEICしくじったとか,釣りに行ったとか,恋愛♡とか,ありとあらゆる報告を彼らは してくれます.コレが卒業まで続くんだろうし,卒業後も続くかもしれないし.

2年間の担任業務はこの人生を楽しくしてくれました.

毎年やりたいとは思わないのですが,また回ってきたらソレはソレで楽しくやります担任業務.北里大学一般教育部では専任教員に数年おきにまわってくるこの仕事,「研究者公募情報」で「北里大学の化学教員」を見つけた頃には想像もしていなかった仕事でした.

このブログを書いている人

www.tnojima.net

*1:現在は海洋生命科学部の先生が4年間を通じて担任を受け持つしくみに変更されています.

*2:ココで適切ではない学生にクラス委員を任せてしまった結果,様々な問題が発生し,それらの対処をやるのがタイヘンな状態になり,結局1年間,クラス担任業務だけやって終わってしまった,という不幸な例もあります.

*3:逆ルートのコースもあります.

*4:もちろん本人の同意を得て.