Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

未来をポジティブに捉えることができることの一つの根拠になっている青色発光ダイオード

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ルビーみたいに赤く光る小さな物体

小学校4年か5年のとき,担任の先生が理科の時間に「最近はこういうものもある」ということで「発光ダイオード (LED)」を見せてくれました.

電池に接続するとルビーみたいに赤く光る小さな粒で,足が2本生えていて,プラスとマイナスを逆につなぐと光らない,という,豆電球とは全く異なる原理で光を出す その物体のことが,しばらく気になっていました.

「赤以外の色を出すのは難しいんだよー」

そのころ私の家では調布駅前にあった家電店で家電を買っていて,配達とか取り付けとかに来ていたのは,アルバイトの #電通大 の学生でした.

理科算数工作少年だった私は,電気関係の疑問があるとその人が来たときに教わっていました .父は東洋史専攻だし,母は国語国文学専攻だし,こういう話をする相手が身近にいないし,家電店で何か買い物をすると,このお兄さんが運んで来てくれるので楽しみにしていました.

のんきな時代だったのか,ものすごく長い時間,電気関係のアレコレを教えてもらったこともあります.電器店にしてみれば商売にならないですよねぇ.お兄さんはバイト代がもらえるだろうからOKだろうけど.

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↑電通大のお兄さんが取り付け工事に来たクーラー

で,あるときクーラーの取り付け工事にその人が来て,LEDの話になって,理科の時間には教われなかったアレコレを教えてもらいました.そのときに「赤以外の色を出すのは難しいんだよー」って教わったことを今でも覚えています.

「他の色のも欲しいよねー」.

あのお兄さん,元気にしてるかな.もういいトシだろうけど.

技術は進歩する

そのうちに緑色が成功して,青も成功して,量産化も成功して,価格も下がって,信号機に使われるようになって,家庭用年末イルミネーションのランプとしてもLEDが普通になりました.

我が家でも,年末の電飾は,電球をつないだものから,LEDのものに交換しました.

小学校の教室でぼんやりと赤い光を放っていた小さな塊が,21世紀にはあたりまえの技術になっていました.

電光掲示板の光源くらいなら可能でも,まさか蛍光灯や白熱灯を駆逐する勢いで照明器具としてLEDが使われる時代が来るなんて,ぼんやりと赤い光を眺めていた頃の私には想像できなかったし,その頃に半導体に関わっていた人々だって想像できなかっただろうし,それでも,他の色のLEDが欲しい! って願い続ける人が必ずどこかにいて,その願いを叶えるための歩みを人類は捨てなかったわけです.

我々は未来をポジティブに捉えてよい

私の化学講義では,

我々は未来をポジティブに捉えてよい.なぜなら,人類はこれまでに数多くの困難を技術によって乗り越えてきたからだ.願いや思いを捨てない限り,人類は困難を乗り越えて未来を切り拓いて行ける

っていうことをメッセージにしているのですが,青色LEDの実用化は,その根拠の一つとなるものです.

そういうわけで,2014年のノーベル物理学賞が青色LEDの研究に対して与えられ,身の回りのLEDについて注意を向ける人が増えたことを,とても嬉しく思っています.


追記 (2014-11-17)

追記 (2016-12-10)

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