Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(28)バイオテクノロジーを支援する化学

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講義内容要約

  • 合成化学の技術が進歩したので,ペプチド,DNA,RNAを合成することができるようになった.
  • 生体高分子の化学合成はタイヘンな作業なので,コンピュータ制御のシンセサイザーを用いた自動合成法が用いられている.
  • 短い一本鎖DNAと,耐熱性DNA合成酵素と,温度可変装置を組み合わせることによって,遺伝子中の特定領域を増幅する方法がPCR.コレは20世紀のバイオテクノロジー+バイオサイエンスに最もインパクトを与えた技術.
  • 蛍光色素を共有結合したddNTPsを混ぜておくDNA合成反応によって,DNAの塩基配列を解読することができる.
  • DNA塩基配列解読技術を用いて,人間を含むさまざまな生物のゲノムDNAが解読されてきたし,これからも解読されて行く.

キーワード

ddNTPs,DNAシーケンサー,DNAシーケンシング,DNAシンセサイザー,dNTPs,遺伝子工学,液相法ペプチド合成,組換え遺伝子実験,蛍光色素,ゲノムプロジェクト,サーマルサイクラー,固相法ペプチド合成,耐熱性DNA合成酵素,プライマーDNA,ペプチドシンセサイザー,保護基,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR),メリフィールド法

前回

前回は「プラスチックの化学」がテーマでした.

人類は天然に存在しない優れた材料を開発し続けていて,その成果は安全で信頼できる医療環境を実現するためにも用いられています.
www.tnojima.net

事前配布資料

前回の講義終了時に予習用の資料を配付しました.コレがテキストになってます.

2016年にゲノムが解読された生き物の紹介

後期試験についての説明

出席者の声:みんなはこういうことを考えている/感じている/知りたいと思っている

遺伝子組換え食品がよく非難の対象となるのはなぜですか?

コレは説明すると長くなるのですが,(1)過剰な安全性要求,(2)技術への無理解,(3)資本の独占など,複数の要素が関係してきます.

一人一人の配列が少しずつ違うのに何をもってヒトのDNA配列と決められたのか気になった.

国際プロジェクトで決定されたのは特定の1人の1セットではなく,数百人のボランティアから採取された染色体を再構成したものです.個人固有の特徴的な配列も含まれていますが,それを考慮するよりも,まずは1セット読んで,それをモノサシにして個人レベルの違いを見る,という考え方になっています.

っていうのとは別に,ゲノムプロジェクトにベンチャー企業として取り組んでいた会社があり,そこの会長が自分自身のゲノムを解読しています.

また,DNA二重螺旋構造研究のワトソン博士も,DNA塩基配列を公開しています.

出席者数推移

(1)91→(2)90→(3)86→(4)85→(5)83→(6)83→(7)84
→(8)78→(9)77→(10)74→(11)80→(12)71→(13)83→(14)78
→(16)73→(17)63→(18)58→(19)59→(20)61→(21)62→(22)64
→(23)58→(24)59→(25)58→(26)55→(27)52→(28)52

次回予告と予習内容

医療や生命科学に関連する化学は今どこまで進展しており,これから先の10年間でどのように発展するのでしょうか.2026年の化学(医療関連)を考えます.2016年度の水曜1限化学講義は最終回になります.

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★イベントのおしらせ「これはヤキイモではない」

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参考書籍

マクマリー有機化学(下)

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  • 作者: John McMurry,伊東二,児玉三明,荻野敏夫,深澤義正,通元夫
  • 出版社/メーカー: 東京化学同人
  • 発売日: 2013/02/27
  • メディア: 単行本
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↑『26 生体分子:アミノ酸,ペプチド,タンパク質』,『28 生体分子:核酸』
基礎高分子科学

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↑『8 生体高分子』
DVD&図解 見てわかるDNAのしくみ (ブルーバックス)

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