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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

毎回毎回リアクションペーパーはちゃんと読んでますよ

雑記

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講義の終わりに出席チェックを兼ねて質問とか感想とかコメントとかを自由に記入できるシートを本学では「リアクションペーパー」って呼んでます.

「リアクションペーパー」って,日本語では何て言うんでしょうか? なんで英語なんでしょうか? ヨソの大学では何で呼んでるんでしょうか? 出席票じゃないですよねぇ? どうでもいいけど.

最初はリアクションペーパーの配付回収をやるつもりゼロだった

私は2009年の4月に北里大学に赴任して,それから化学の講義を担当してるんですが,赴任直前に荷物整理とか業務引継だとか講義の準備だとかをしていた頃には,リアクションペーパーの配付回収だとか出席チェックだとかををやる意思はゼロでした.完全にゼロ.

なんでかっていうと,「大学の講義ってのは履修すると出席する『権利』が与えられるっていう性格のものであって,出席の『義務』を負うわけではない」っていう考え方をしてたからです*1

役に立つとか面白いとか,そういう講義なら出席チェックなんかしなくても学生は集まるし,そうじゃない科目は「学費払ったうえに時間まで拘束されてたまるかよ」っていう考え方を学生時代からしてきたわけです*2

でもやることにした

というハナシを,赴任直前に荷物移送や事務手続きの相談で北里大学に来たときに,私の前任者のM先生*3にしてみたところ,次のようなコメントが返ってきました:

「のじまさん,それもいいでしょう.でも,試しにリアクションペーパーに書かせてみるといいですよ.おもしろいですから.とにかく一回,紙を配って,自由に書かせて,それを読んでみるといいですよ.」

じゃ,そうしてみるか,と思って.その春の講義第1回目から紙を配ってみることにしたわけです.

やってみたらどうだったのか

結論から言うと,このアドバイスは正しく,書かれている内容の中には確かに(イロイロな意味で)おもしろいものも多く,考えさせられるものもあり,これによって私の講義は毎回アップデートされてます.

「リアクションへのリアクション」とか,「リアクションへのリアクションへのリアクション」っていうが起こっているからです.

(1) 勘違いしていたことを知る機会になる

「それ,違うんじゃないですか?」的なツッコミを入れられることがあります.たとえば初年度に,「身の周りの道具をつくる材料」として「ガラスがメガネのレンズだとか瓶とか窓とかに使われている」と説明したら,「メガネのレンズはプラスチックじゃないんですか?」というコメントが返ってきました.それで調べてみると,確かに今はプラスチックが主流なのです.知らなかった.自分が使わない道具だと古い常識を更新しないままになってしまうわけです.

こういう情報はみんなで共有.次の講義で説明しました.

(2) わかっていなかったことを知る機会になる

化学に関係しそうなものごとをアレコレと尋ねられます.
これまでに「羽根の無い扇風機のしくみ」とか「夕方に空の色が赤くなる理由」とかを質問されたので,そのたびにスライドをつくって説明してきました*4

これ,理科にくわしくなります.理科.私も履修者も両方ともね.

(3) 伝わってないことを知る機会になる

「そんなこと言ってないぞゴルア!」的な壮大な勘違いコメントが返ってくることがあり,何度も腰を抜かしてきました.具体的な例は出さないけど.

人間なんです人間.全ては正確に伝わらないんです.っていうことを前提に講義をやることにしたら,小さなことがどうでもよくなりました.大きな人間になろうぜ☆

(4) 昨今の学生事情がイロイロわかる

喜怒哀楽,苦悩,「むしゃくしゃして書いた」,その他イロイロなことが書かれており,自分もかつてはそんなもんだったのだろう,と思ったり,純粋におもしろかったり,アタマが痛くなったり.ああ,人間を相手にしてるんだなーなんてことを確認することになるわけです.

で,次に考えたこと

その1 ブログのコメント欄を使ってみた

その場では思いつかなくても,ふとしたタイミングで思い出したりひらめいたりすることがあります.それで,気が向いたときにコメントを受け付けられるよう,初年度から,ブログのコメント欄に何でも書き込んでOKということにしていました.ここで質問に答えればその内容を広くシェアできるし.
しかし,書き込みはほぼゼロでした.

そりゃそうでしょう.わざわざ化学の講義録なんか見にこないだろうし,見に来てもわざわざコメントを書くのって抵抗がありますよねぇ.

その2 Twitterを導入してみた

翌年度(2010年度)からはTwitterによるコメントを受け付けてみることにしました.初回からTwitterのアカウントを知らせて,「Twitterは集合知による問題解決システムだ!」というようなことを言ったわけです.

そうしたところ,履修者との相互フォロー関係が爆発的に広がって行き,頻繁にやりとりをするようになりました*5.計算問題の段階的指導なんてのもTwitterでやるようになりました.

しかし,リアクションペーパーの代わりっていう位置付けにはなりませんでした.別の面でイロイロとおもしろいことになったんだけどね.

で,なんだかんだで紙に書くのがいいっぽい

オンラインのやりとりだと電算化された文字情報が残るのでアレコレと便利なのですが,結局は講義が終わったタイミングで書くのがいちばんということで*6,いまは,毎週の講義のおわりに配ってる確認問題解答用紙に自由記入欄を設けておいて,「書きたい者は書け」ってやっています.翌週の講義冒頭で紹介しつつ,質問には回答.

2013年度もそうしたし2014年度もそうする

何か書いたからといって評価が上がったり下がったりすることはありませんので,気が向いたら何か書いておいてくださいな.何を書こうかと考えるだけでも,その回の講義の内容を振り返る機会になるしね.

おまけ:ぜんぶスキャンしてとってある

講義が終わるとすぐドキュメントスキャナーで電子ファイルに変えてます.紙のほうは年度末に処分してますが,ファイルは保存してあります.たまに見返すとおもしろいものですよ.ふふふ.
d.hatena.ne.jp

このブログを書いてる人

takahikonojima.hatenablog.jp

*1:体育とか実験とか実習ってのは「参加することに意義がある」系の科目なのでハナシは別.

*2:勉強ってのは自分で勝手にやるもので,勉強にならない講義を毎週毎週強制されるのには納得がいかない,ってのが当時の大学生の標準的な考え方でした.たぶんね.

*3:その春に定年退職されました.

*4:ベルヌーイの定理とか,可視光の波長と散乱なんてのは,説明できるレベルまで理解してないものです.

*5:化学とは関係ないものごとについてのネタの方が多いのが現状ですが

*6:学生にしてみると時間割がイロイロな科目で埋まっているし,自宅で勉強しないし,その講義について考えるのは講義中と講義が終わった直後くらいなわけです.