Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学部の化学講義(6)原子と原子のつながり・その2

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キーワード

極性共有結合,金属結合,自由電子,水素結合,多原子イオン,電気陰性度,配位結合,非極性共有結合,分極

講義内容の要約

  • 異なる2個の原子間で結合に用いられている電子は,どちらか片方の原子にかたよっている.電子を引きつけている原子は電気的にマイナスになり,もう片方の原子は電気的にプラスになる.このとき結合が分極しているという.
  • 分極している共有結合を極性共有結合と呼ぶ.分極していない共有結合は無極性共有結合.無極性共有結合は同じ種類の原子が結合したときに生じる.たとえばH2とかO2とか.
  • 分極の度合いが高くなって,電子が片方の原子に完全に移ってしまっている状態がイオン結合.
  • 原子間で結合をつくったときに電子を引き寄せる強さをあらわす数値が電気陰性度.結合している2個の原子の電気陰性度の差が大きければイオン結合としての性質が大きくなる.
  • 金属結晶では陽イオンどうしが自由電子を介して結びついている.自由電子があるので金属には電気が流れたり,熱がよく伝わったり,光沢があったり,延性や展性があったりする.
  • 電気陰性度の高い原子(F,O,N)に共有結合した水素原子を介して分子どうしがつながる結合が水素結合.結合の強さは,分子間力<水素結合<共有結合.
  • 非共有電子対を用いて原子と原子が結ばれる結合が配位結合.配位結合している原子どうしは共有結合している場合と区別がつかなくなる.
  • 原子の集まりが電荷をもっているのが多原子イオン.いろいろある.医療に関係するのものは暗記せよ.

該当する教科書のページ

第4章の後半,42ページから48ページ.

はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学

紹介した動画

水は温度を下げて行くと体積が増える性質を持っています.鉄製の密閉容器内に水を入れ,凍結させると,内部の水が膨張し,容器を破裂させます.

確認問題

電気陰性度に基づいて結合がイオン結合としての性質を強く示すか,共有結合としての性質を強く示すかを判断する問題.

出席者の声:みんなはこういうことを考えている/感じている/知りたいと思っている

●上の引き算はどっちのイオンから引けば良いですか?

大きい方から小さい方.

●どの分子がδ+でどの分子がδ-なのかは決まってるんですか?

分子としてはδ+もδ-もない.分子の中の原子について,電気陰性度の高い原子がδ-に,そっちに電子を引っ張られる原子がδ+になる.

●なんで酢酸の方が水よりも結びつきが強いんですか?

たぶん沸点の差についての質問.酢酸は2個セットで水素結合するからみかけの分子量が2倍になって沸騰させるのにエネルギーが必要で,そのエネルギーの大きさは水を沸騰させるためのより大きい,っていうこと.

●小さいときに炭酸飲料を飲むと骨がとけると言われたけれどそれの根拠は何ですかね?

炭酸そのものの有害性を飲料水レベルで考える必要ナシ.炭酸飲料水の中にはイロイロな成分が入っていて,それらの中には人体からのCa排泄を加速するものもあって,その結果として骨が弱くなる可能性がある,というハナシ.

●Oがマイナスの電気を帯びている理由がわからない.

電気陰性度が高いから.

●水素結合,配位結合なのですが,ぼんやりとしか理解できませんでした.もう一度説明していただけたら嬉しいです.
●配位結合で一部のH2OがH+になっていたらその他はどのような状態でいるのですか?
●何が配位結合なのかわからなかった.共有結合になるのでは?

次回講義冒頭で整理します.

●CH2Cl2のような多原子分子の場合,どのようにして極性のありなしを見わければ良いのですか?

次回講義で説明します.

●私たちがあたりまえのように見てきた皿や医療器具のメスなどは金属結合の自由電子のおかげであると思うと,その物質がどのような結合なのか考えるのは楽しいと思った.
●身の回りのものがどのように成り立っているのかわかりと少しだけ見る目が変わります.理解できればできるほど化学っておもしろいなと思います.
●金属が電気を通したり熱を伝えたりするしくみが分かって感動した.配位結合の矢印の意味がよくわかりませんでした.
●今日の水と鉄のビデオにはびっくりしました.水がふくらむってこんなに力があるんですね!!
●電気陰性度は初めて聞きましたが求められるよう勉強します.
●電気陰性度がわかってスッキリしました!
●高校のときは電気陰性度がよく理解できてなかったが,今回ので理解した.
●電気陰性度という言葉を初めて聞いたので少し不安でしたがイオン結合と共有結合の違いに関わっていて説明もわけりやすく理解できてよかったです.
●電気陰性度からイオン結合性の高いものか共有結合性の高いものかを予測できるのだと思った.水の力ってすごい!!今後少し気をつけようと思った.
●イオン結合か共有結合かの説明がすごいわかりやすかったです.最後の鉄の玉が氷で破裂するのには驚きました.延性があるから少しは金属も変化すると思っていたが,何も変化しないことがわかりました.
●電気陰性度の計算でイオン結合性が高いのか共有結合性が高いのか分かるのは初めて知りました.水以外のものはすべて凍ると体積は減るのに水だけ増えるのは不思議だと思いました.
●イオン結合と共有結合の境目がきっちりと決まっていないことを知り,やっと納得しました.スッキリ♪
●δ+やδ-は基礎看護科学Iの講義でも出て来て,何を意味しているのかよくわからなかったのですが,今日の講義でスッキリしました! 配位結合のところがイマイチよくわからなかったのでしっかり復習しようと思います.
●生化学でも水素結合が出て来たときよくわからなかったけど,今日の授業でどんなものか理解できた.
●配位結合はやったことがなかったので難しかったです.電気陰性度もいろいろとしくみがあって複雑でした.
●ひととおり結合についてわかりましたが先週のと合わせて整理しないと混乱するなと思いました.共有結合の1/10である水素結合の威力に驚きました.
●水素結合のやつの爆発がすごかった.寒いところでは水を出しっ放しにしていないと水道管が破裂するのに驚いた.
●身近にある水があんなに恐ろしいものだとは思ってなかったのでびっくりしました.
●センター試験のための勉強で水が氷になるとふくらむのは知っていたけれど鉄球を破壊するほどの力があるとは思っていませんでした.驚きました.水道管が破裂しない地域に将来は住みたいです.
●水が冷えると体積が増えるというのは中学高校と学んでいましたが,鉄球を破壊してしまうほどのパワーがあることに動画をみて本当に驚きました.
●水の実験の映像を見て水道管が破裂するのはこわいと感じました.私の家では冬に水道が凍ってしまうので,夜は水を少し出しながらすごしていました.
●コナン君が青酸カリなめてるやつマンガで見てずっとアカンやろーと思ってました.また見れて面白かったです.
●水を凍らせたとき体積が増えるのは知っていましたが,規則正しく並ぶことで出来るすき間によって体積が増えているのには驚きました.新しいことを知れて授業が楽しいです☆
●水素結合があそこまで強いとなると共有結合というのは恐ろしく強いものなんだと思った.化学は恐ろしかった・・・
●水素結合の力はすごかった!!
●沸点とか融点の違いが結合の違いから来ているということに驚いた!
●様々な化合物を身近な物に例えることができたので覚えやすかったです.
●化学式を覚えるのは好きなのでここの分野も頑張りたいです! 青酸カリを飲まないように気をつけたいと思います.笑
●二原子分子と結合についての説明ありがとうございました.とても分かりやすくて理解できました.今回の範囲は中学高校時代からはっきりと理解していなくて,なんとなくで解いていたのでちゃんと理解できてよかったです!
●今回の内容はわかりやすかった.配位結合がどういうものなのかいまいちよくわからなかった.でもだんだん楽しくなってきた.
●高校の時,習ったことのない分野だったので,頑張りたい.
●化学は難しくて疑問が生じるというよりも教えられたものをそのまま受け入れてしまいます.
●結合がたくさん出てきたのでしっかり覚えたい.
●いろんな結合を学んだのでごっちゃにならないようにしたい.
●結合がたくさんできてきたのでその種類を見わけるのが難しいなと思いました.
●様々な種類の化学式が出て来て頭の中で整理するのが大変だと思うので早めに復習をしたいです.
●化学やっていなかったので結合の種類がたくさんできてきて混乱していますが,しっかりとやっておきます.
●先日,町田で起こった火事のニュースで,Mgに水をかけてますます火が大きくなる映像が流れ,授業でやったなーと思いました.

出席者数推移

(1)44→(2)44→(3)43→(4)44→(5)43→(6)43

次回予告と予習

「(7)原子軌道と分子の形」を学びます.配布物を読んでくること.