Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

出題者からみた定期試験

f:id:takahikonojima:20130701160310j:plain*1
試験は受ける側だけでなく,出題する側にもイロイロある年中行事です.今回は出題する側になってからのこれまでを振り返ってみます*2

模範解答づくり

「試験の解答例? そんなの試験が終わるまで作らないよ,面倒だろう? ほら,デキそうなやつがいるだろ? そういうのを何人かチェックしといてさ,そいつらの答案を抜き出すわけ.それが模範解答の候補になるわけさ.次に,他の連中の答案と模範解答とを比べるんだよ.模範解答と同じ解答が過半数になってるはずだからさ,そいつを正解にするわけ.よほどタチの悪い問題を出題しない限り,みんながバラバラな答えを書いてくることは無いから大丈夫だよ.最後に模範解答の氏名欄と学籍コード欄を消してコピーしてみんなに配っておしまい!」

ということを調子のイイ生産性の高い先輩に教わったことがあります*3

そのことを思い出して私は初年度,「デキそうな何人か」を探すところから始めました.化学実験を担当していると化学履修者と直接接する機会もできます.また,実験説明を聞いているときの態度とか,実験操作の段取りとかから,スジの良さを確かめることもできます(と思っていましたがそんなことは以下略).

で,試験が終わり,事務から返ってきた答案の束から,模範解答になる(はずだった)答案を抜き出しました.

「予想通りムダの無い答案だ! 字も読みやすい! コピーも取りやすいぞ!」

と思って,その答案を見ながら,用意してあった計算問題の答えとを照らし合わせる作業に入りました*4.解いてある問題に間違いはありませんでした.ところが,解答用紙のどこを見ても答えの見つからない問題がいくつかあるのです.

解き忘れか!? ちゃんと問題文を最後まで読めよ!*5

しょうがないので,調子のイイ生産性の高い先輩に教わった方法は止めにして,ちゃんと自分で配布用の解答例をつくったのでした*6

急がば回れ.

解答用紙づくり

解答欄の無い解答用紙

1987年,私が大学に入学して驚いたしくみの一つが,

「学籍コードと氏名を記入する欄以外は白紙になっている解答用紙が配られ,好き勝手に使って解答すればよい.」

というものでした*7.これは試験を受ける側にしてみれば便利な方法です.解答欄の残り面積を気にすることなく,多段階にわたる計算や証明を続けて行くことができるからです.

精神の解放!

試験が始まると問題を一通り読んで,解けそうな問題から順に取り組んで行き,解答用紙を埋めて行きます.スペースが足りなくなれば裏に続きを書き,それでも足りなければ監督者に追加用紙をリクエスト.問題を解くことだけに神経を集中することができます.

というわけで,2009年に化学講義担当となったとき,私はこのやりかたを採用したのでした.

60分ある! 解ける問題から解け! 紙はいくらでもある! 勝手に使って解きまくれ! Go! Go! Go!

ところがこの方式は不評でした.高校までに慣れている方法と勝手が違いすぎ,やりにくいというのです.

また,解ける問題から解いて行くため,問題を解き忘れるというハプニングも生じました.

さらに,採点するときにもこの方法は面倒でした.どこにどの問題が解答されているのかを見つける作業が問題数×受験者数だけ発生するからです.

止め.


●解答スペースだけ指定する方式にしてみた

というわけで,翌年度からこの方式は止めて,大問ごとに解答スペースを区切った解答用紙を用意しました.こっちの方が学生には取り組みやすいようで,解答用紙についての文句は出ませんでした.
採点も楽になりました.
次の年度もこれで行こう! と思ったのですが・・・・

●解答欄があると解き忘れがなくなる

後期の試験がおわり,通年の成績が公表された時期に,後期試験の点数を教えてほしいという学生がやってきました.「優」の成績をとったが,答案を見たいと言うのです.それで答案を引っ張り出して,いっしょに確認しました.すると,小問を1問解いておらず,満点には達していないことがわかりました.といっても,通年の点数合計では上位1一桁パーセントに入るスコアです.

ところが,この学生は非常に残念な表情を見せました.

「全科目で満点を狙って全力投球で勉強をしているので,解き忘れで満点に達しなかったことが悔やまれる」

とのことでした*8

もしも小問それぞれの答えを記入する解答欄が設けてあったら,この学生は解き忘れをすることもなかったでしょう.そう考えた私は,1ミリグラムほど申し訳ないと感じたのでした.

解答欄がなかったために解き忘れた,という者が他にもいたことでしょう*9.初年度に模範解答に使えるだろうと思って抜き出したものの以下略,という答案を提出した学生も,その一人だったのかもしれません.

●解答欄付きの答案用紙をつくることにした.

というわけで,次の年度には小問の答えを記入する解答欄を設けた解答用紙を準備しました.

f:id:takahikonojima:20130701160509p:plain f:id:takahikonojima:20130701160513p:plain

これなら解き忘れは防げます.計算問題の解答欄には単位も記入しておきました.至れり尽くせり.採点も楽です.現在採用している方法がコレになります*10

進級アドベンチャー

出題する方もアレコレと考えて問題とか解答用紙とかを準備していますので,解答するみなさまは合格点を取って,無事に進級してくださいな.


関連記事

www.tnojima.net

このブログを書いている人

www.tnojima.net

*1:イラスト出典→ http://kanpoh.com/juken/img/a.jpg

*2:この記事は2012年1月5日に はてなダイアリーで公開したものを改訂したものです.

*3:なお,このヒトは北里大学の教員ではありません.

*4:さすがに計算問題の解答くらいは問題を印刷に回す前に作っておきました.

*5:なお,この学生はちゃんと後期にぶっちぎりに優秀な点を取りました.4年で卒業して今ごろはちゃんと医療系の専門職として働いている模様です.

*6:問題ごとによく出来ている解答を選び,コピーをとって切り貼りして模範解答にしよう,などということも考えたのですが,解答用紙の好きなところに記入する方式だったので,切り貼りレイアウトが面倒でした.

*7:すべての科目がそうだったわけではありません.解答欄の指定された科目もあったし,問題用紙と解答用紙がセットになったものもありました.

*8:そういう学生がいるんですよ北里大学には! 信じられないでしょ? ウソじゃないっす! こっちもテキトーなことをできないんですよ!

*9:そういう不注意も採点対象となる,という考え方もあるわけですが,しかし,それは化学の理解度を確かめていることにはなりませんよねぇ.

*10:しかし,確認のために自分のつくった解答用紙を使って自分で解答してみると,これがなんともしっくり行かないのです.白紙が配られて好き勝手に埋めて行くやりかたがいいなー