Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

(15)全15回のまとめ

前回の授業終了後に寄せられたコメントの紹介

前回の授業終了時に寄せられたコメントをすべて紹介し,回答しました.詳細は前回の授業記録に記載してあります.

講評:調査レポート

調査テーマの絞り込みは全体を通して適切でした.4枚から5枚のレポートにまとめることを考えると,ちょうど良いサイズの課題を設定していました.

レポート執筆における体裁としては,以下の点が不十分なものがそれぞれ数点みられました.

  • 図表に通し番号を入れる.
  • 本文で図表を引用する.
  • 参考文献リストを付ける.
  • 断定調で書く.
  • 表やリストにできないかを考える.

講評:30秒トーク

レポートの内容を30秒間で話すとき,必ずしもレポートに記されている通りに簡略版をつくるのが良いとは限りません.映画の予告編のように,印象的な部分を最初に持ってきて,これに続けて優先度の高いものから話して行くという手もあります.限られた時間で印象に残る説明をするという点では,TVのコマーシャルも良いお手本です.

論理的に考える

レポートを書くときに犯しがちな論理展開上の誤りを紹介しました.

フグの肝臓にはテトロドトキシンが含まれている.これは運動麻酔を引き起こし,重症の場合には呼吸麻痺により死亡する.しかし,フグにはテトロドトキシン以外の毒は見いだされていない.だから,肝臓を取り除いて食べれば,フグも安全である.

野矢 茂樹,『入門!論理学』p25より引用.

あなたは肝臓を取り除いたフグを安心して食べられますか?

「食べられる!」と自信をもって答えたヒトは要注意.

ここでは「肝臓にはテトロドトキシンが含まれている」とは書かれていますが,「テトロドトキシンが含まれているのは肝臓だけだ」とは書かれていません.実際,他の臓器にもテトロドトキシンが含まれています.そういうわけで,肝臓を取り除いただけではダメなのです.

このように,ちょっと油断していると誤った結論を下してしまうことがレポート作成時にも,それ以外の文章作成時にも珍しくありません.また,こうしたパターンを利用した悪徳商売も世の中に溢れています.「論理的に考える」習慣は,大学生活を通じて身につけたい能力の一つです.

悪魔の証明

レポート中の論理構成で,「○○が存在しないことは証明されていないので,○○が存在すると考えてよい」というような結論を下してしまうことがあります(今回のレポートには見られませんでしたが).これは「悪魔の証明」と呼ばれる論理構成です.

この世界に悪魔が存在しないことを証明してみろ.証明できないだろう?証明できないということは,悪魔が存在するってことだ.悪魔は存在するんだ.

このような乱暴な論理展開をしてはいけません.「ある・できる」 vs 「ない・できない」の論争になった場合には,「ある・できる」側に証明義務を負わせるのが近代的な物事の考え方です.

残念なことにこうした基本的なことを理解していない困ったヒトが世の中に溢れています.そういうヒトたちの相手をしてはいけません.時間の無駄です.

4月から何を学んできたのか

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全15回を通して,「調べる」,「計画を立てる」,「記録を残す」.「レポートを書く」,「伝える」,「決める」.「説明する」といったスキルを身につけることがこの演習の目標でした.毎回の演習の内容は,これらのいずれかに対応したものになっていました.この演習を通じて学んだことが,残り3年半(以上?)の大学生活に,そして卒業後の人生に役立つものであることを願います.

これまでの授業記録

関連リンク

参考書

今回の演習では以下の書籍を参考にしました.

議論のルールブック (新潮新書)

議論のルールブック (新潮新書)

入門!論理学 (中公新書)

入門!論理学 (中公新書)

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

詭弁論理学 (中公新書 (448))

詭弁論理学 (中公新書 (448))