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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

(11)考えをまとめる文章の組み立て方

前回の授業終了後に寄せられたコメントの紹介

前回の授業内容,およびそれまでに学んだ内容についてのコメントをすべて紹介し,回答しました.

詳細は前回の授業記録に追記してあります.

2回目の席替え

全15回の授業を5回ごとに区切って履修者27名がシャッフルされるようにしています.大幅な席替えになることを期待したのですが,連続して同じグループになる組み合わせが多く,意外でした.

配布物

どちらかを選ばなければならない場面

数学や化学の試験では,与えられた問いに対して誰が取り組んでも,正しい考え方をしていれば同じ答えにたどり着きます.しかし世の中にはそういう問いばかりが存在しているわけではなく,「正解を自分で決めなければならない問い」というものも存在します.ここをどうするのかが今回のテーマです.

(1)オリンピックを東京で開催する/開催しない

もしもあなたに「東京でオリンピックを開催するかしないか」を決定する権限が与えられたとしたら,あなたはどうしますか?

ここには「開催する」と「開催しない」の2通りしか答えはありません.そして数学や化学の試験問題を解くのと違って,答えは自分で決めなければなりません.

どうするか.

ここをグループワークで話しあい,その根拠を各グループから3点ずつ挙げてもらいました.

全5グループのうち,「開催する」が3グループ,「開催しない」が2グループでした.グループ内で真っ二つに割れていたところを一つにまとめて行ったグループもあれば,最初から意見が固まっていたグループもありました.

双方の意見を聞き比べてみる

「オリンピック開催する」との結論を出したグループからは,外国人に日本を知ってもらうため,経済を活性化するため,沈んだムードを元気づけるため,インフラを整え直すため,国をあげて応援する機会をつくるため,というようなものが理由として挙げられました.

一方,「オリンピックを開催しない」との結論を出したグループからは,交通が混乱する,治安が悪くなる,支出がかさむ,電力が足りない,最外復興に手がまわらなくなる,といったものが理由として挙げられました.

●1つのことを自分の側面からしか見れず,言われてやっと1つの別の側面が見られたので,議論するときに活かしたい.

●みんなで話すと,みんなからそれぞれの意見があって,あ〜とか,え!とか疑問もうまれる.けど,これ,たのすぃー!

●こういう討論みたいなの好き!

●どちらかに決めなければいけないという場面は多い.私はいつも迷ってしまうので,決められるようになりたい.

同じ理由で異なる結論に至ることがある

各グループから結論と根拠を出してもらい,それを全員で聞いて自分(たち)の考えと照らし合わせてみました.

「東北で震災があったので」から始める結論が2通り出ました.一つは「復興に力を入れるためにオリンピックに力を注いでいる場合ではない」というもので,もう一つは「復興に必要な経済を活性化するためにオリンピックをもってくるべきだ」というものでした.

授業後に書いてもらったコメント欄には「同じ根拠から異なる意見が生じることが興味深かった」というものがありました.

●開催するという意見を持っている人が多くて新鮮でした.同じ震災後ということから考えても答えがちがくなるというのが当たり前だけれど面白かった.

●「震災が起きた」という同じ理由で,反対の意見がでるのは面白いな,と思いました.

●出発点は同じなのに結論が違っていたりして,おもしろいと思った.いろんな方向から見ることが大切.

●同じところからスタートしてもそこからまたちがう意見が出たりして,討論のおもしろさがわかった.そして,こんなことが今,日本で問題になっているんだなと知り,もっと日本に興味をもたなくちゃ!と思った.

「目指しているものは同じ.でも手段が違う」という場面は,じつは珍しくありません.手段の違いから意見が対立した場合には,「相手の目指しているものは何なのか?」を考えてみることによって,双方が納得できる答えにたどり付けることがあります.

今回の演習ではこのことを少し感じてもらえたようです.

●開催する派が予想以上に多くて驚きました.開催するという結論を出した班は,「東京で」というよりも「日本で」ということに重点を置いていたように感じました.

●「招致する」という意見が多くて意外でした.どちらの意見も震災が理由となるものがあり,考え方の違いでこんなにも違う意見になることは驚きでした.

●オリンピックを開催するという班が多くておどろいた.

●私は最初から「開催しない」で考えていたけど,「開催する」の意見を聞いてなるほどって思った.でもやっぱり今はやるべきではないと思った.

●日本人は別にオリンピックなんかやらなくてもいいじゃんって思っている人が多いと思います.特に今,震災復興中だし,オリンピックをやろうと騒いでいる場合ではないと思います.でも,約10年後にオリンピックをやる!!っていう目標ができれば(復興とかも)日本はもっとがんばれると思います.

他人の意見をサーチしてみる

インターネットで第三者の意見を探してみましょう.今回は新聞社の社説を読んでみることにします.6月に朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞がそれぞれ社説で東京へのオリンピック招致について述べています.

朝日新聞
「東京五輪 都民は望んでいるか」(2011-06-18)
読売新聞
「東京五輪招致 復興の証しに聖火を灯したい」(2011-06-19)
日本経済新聞
「東京五輪を実現するためには 」(2011-06-21)

それぞれの社説を要約して紹介しました.

あわせて,文章の組み立て方によって読み手の考えを誘導するパターンを解説しました.

●新聞によってこんなに違うのには驚きました.初めて知りました.もうちょっと新聞を読んでみようと思いました.

(2)サマータイムを実施する/実施しない

もしもあなたに「サマータイムを実施するかしないか」を決定する権限が与えられたとしたら,あなたはどうしますか?

今回も,「実施する」と「実施しない」の2通りしか答えはありません.この問題についてもグループごとに意見をまとめてもらいました.

ただし,今回は「まず結論を出す.続いて時間をかけて調査し,もう一度結論をみなおす」というプロセスを体験してもらうことにしました.今回グループごとに結論を出したわけですが,その結論の妥当性や,反対意見をwebなり書籍なりから調べてみて,来週のグループワークで改めて結論を出してもらう試みです.結論が変わるグループもあるかもしれないし,結論を変えないグループもあるでしょう.どうなるか楽しみです.

●オリンピックは少し自分とはかけ離れている気がして今いちピンとこなかったけど,サマータイムについてのディスカッションはたくさん話し合えて楽しかった.

●結論を出すのにどちらの根拠も的確だから難しいと感じた.サマータイムに関しては,知らないことも多く,特に結論が出しづらかった.

次回予告

「サマータイムを実施する/実施しない」のグループワーク.続いて「悪文」を添削して行くグループワーク.さらに「実験レポートではないレポート」の課題に取り組み始めてもらいます.

これまでの授業記録

関連リンク