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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

(3)高校から大学へ

教養演習2011

配布物

グループワーク「大学生になって」

2011年度の1年生が大学に通いはじめてまもなく3週間になります.実際に大学生活を送ってみて,高校とは違うイロイロなものごとに気が付いたことでしょう.どんなことに気がついたか,どんなことを感じているか,どんなことを考えているか,を整理してくることがホームワークでした.この内容をグループワークで整理してみました.

ホームルームがなくなったかわりに,自分で掲示板をチェックしなければならなくなった,とか,欠席や遅刻に対する生活指導がなく,時間割を自分で組むことになった,というあたりで,「自己責任」と「自由」感じている,という声が多く出ました.

「高校生不可」というアルバイトに応募できるようになったことがうれしい,という声もありました.ちょっと大人になった感じでしょうか.

全国から学生が集まっているので,教室で方言を聞くことが新鮮だ,という声がありました.この驚きは人生で一度限りのものです.1年生のうちは新鮮な驚きがたくさんあります.

他には,掃除当番がなくなった,とか,図書館に専門書が並んでいて驚いた,とか,校舎内にコンビニがあって便利だ,といった声もありました.

日頃ヒマなわりには〆切前に苦しい思いをするのはなぜか

多くの大学生が試験直前やレポート提出直前に,高校までには体験することのなかった切羽詰まった状況に追い込まれます.1年生の4月には実感がわかないかもしれませんが,夏が近づいて来ると,思い知らされることになります.その理由を解説しました.

高校までは多くの科目で毎週2回以上の授業が行われていました.そのため,前回の内容が頭に残った状態で次の内容を積み上げて行くことが楽でした.学期ごとに1回か2回の定期試験があるので,試験範囲もちょっとムリすれば一晩で確認しなおすことができました.基本的に毎朝同じ時刻に登校することになっていたし,サボったり遅刻したりしていると生活指導を受けるハメになっていました.

これに対して大学では,生活指導も風紀指導もありません.サボったからといって叱られるわけでもありません.だから自分で自分の生活をコントロールしないと,ドロップアウトする危険が高いのです.

大学では,ほとんどの科目で講義は週に1回だけです.一週間経つと頭の中からすっかり抜けている,なんていうこともあります.そして90分授業なので一度に扱われる内容が高校の頃の倍くらいになります.90分間集中するのはきびしく,知識の多くは頭に定着しません.

試験は年に1回か2回しか行われないので,1年生の前期などは高校時代と比べて試験の心配をするわけでもなく,暇な毎日だと感じる人もいるくらいです.

暇だと思っているうちに夏が来ると,試験日程が発表になります.一応,カレンダーなり手帳なりに試験日くらいは記録することでしょう.でも何かアクションをとるわけでもありません.

そして試験日が近づいて来ると,試験対策を立てなければならないということを悟るわけですが,1週間に1回の講義を受けただけの頭にはロクに情報が残っていないわけです.しかも科目数が高校の頃よりも多かったりします.

そして1年生前期の試験期間がやってきて,試験結果は悲惨なことになるわけです.

グループワーク「スケジュール管理の実際」

大学生活を快適に進めるためには,前倒しで試験対策だのレポート作成だのをやっつけて行く攻めの姿勢が重要です.ここで鍵を握るのがスケジューリングです.カレンダーやスケジュール帳などに予定を記入している人も多いことと思います.各自で工夫している点や困っている点,人に教えてあげたい点などがあるはずなので,それをグループワークでまとめてもらい,発表してもらいました.

スケジュール管理は自分に合った方法がみつかるまでアレコレと試してみることになります.「イロイロやったけど自分の記憶に頼る!」という強者もいれば,重要事項を紙に書いて玄関に貼っておく,という人もいました.カラーペンを使い分けて手帳を見やすくする工夫とか,フセンを使って編集しやすくするなど,人数分の工夫があります.

時間を仕分けする

35,040時間.

4年制大学の大学生として過ごせる時間の長さです.これが大学生活の「持ち時間」になります.持ち時間は有限です.アレもコレもやりたいところですが,物理的にムリです.そこで,時間の使い道を「仕分け」する必要があります.

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重要で急ぎ
ケガや病気,レポート提出前夜,など.ようするに「緊急事態」.対応せざるを得ない.
重要ではないが急ぎ
いきなりかかってくる電話,来客,それらによる作業の中断.ようするに「ジャマ」.完全になくすことはできないが,減らすための対策は立てられる.
重要だが急ぎではない
資格取得にむけての日々の勉強,趣味の充実,将来の構想.ようするに「生活の質向上」.これがいちばん重要.
重要でもないし急ぎでもない
だらだらとTVを見続ける,用もない長電話,など.ようするに「時間つぶし」.まったく意味がないが一番時間を消費していたりする.

というわけで,まずは4番目の「重要でもないし急ぎでもない」の撲滅を目指し,それから「ジャマ」が入りそうな場面を想定して避難する方法を準備し,そして,緊急事態を招かないように計画的に試験対策やレポート制作を進めることが成功の秘訣です.

上手にレポート課題をやっつける

「がんばる」とか「努力する」とか「がまんする」ではなくて,攻めの姿勢は「やっつける」.

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たとえば次のような課題が出たとしましょう.

(例) 読書レポート課題

○○に関する書籍を2冊以上読み,自分の考えをまとめる.

A4用紙10枚.

〆切6月1日(水)17:00

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カレンダーの提出日に「レポート〆切」などと書いても,ほとんど役に立ちません.なぜなら,その日にレポートができていなければ〆切を守れないからです.

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むりやり〆切にまにあわせても,それによって成長することは期待できません.

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重要なのは,〆切日までの日々に,どのようにレポート作成を進めて行くかです.そのためには図書館に行く→本を選ぶ→本を読む→内容を理解する→内容をまとめる→考える→レポートを書く→レポートをみなおす→レポートを改訂する→レポートを完成させる→提出する,という一連の細かく区切られた作業を,〆切日までに割り当てて行くことです.

また,人生というものは予期せぬジャマや事故が起こるものです.〆切日の2日前に「自分の〆切」を設定しておくのがおすすめです.

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レポートの具体的な書き方については,第7回目以降に扱います.

自分の「性能」を知る

具体的な作業手順を決めるためには,それぞれのステップにどれだけの時間が必要になるかを自分で知っていなければなりません.1時間で何ページの本が読めるか,1時間でA4サイズの文章を何文字書くことができるか,文章を書くのは得意か,グラフやイラストを描くのにどれくらい苦労しているか,など,自分自身でなければ知らない自分の「性能」を理解しておくことによって,ムリのないプランを立てることができるようになります.性能を知るためには,実際に時計で時間を計測してみる必要があります.たいていの場合,自分自身で考えていた必要時間と,実際にかかった時間とがまったく違うものです*1

次回までの課題

次回とその次のテーマは「授業ノートは役立つ記録」です.高校までと同様に黒板を使う方式,パワーポイントのスライドショー,配布プリントを解説する形式,言葉による伝達,などなど,様々な形式があり,とまどっている人も多いところです.そこで「ノートのとりかた」について感じていること,困っていること,工夫していること,などをA4用紙1枚に纏めてくることにします.次回,その内容に基づいてグループワークをやります.

これまでの授業記録

関連リンク

参考書

今回の授業では以下の書籍を参考にしました.どちらも成功している理系研究者が,「しごとのやりかた」を解説してくれている書籍です.

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)

ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書)

*1:じゅうぶんに時間が与えられていても〆切を守れないとかギリギリまで終わらないというオトナは,自分の性能を計測したことのないヒトです.