Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

2010年度後期,医療工学科「化学」授業評価

12月15日1限の化学講義で,授業評価アンケートに回答してもらいました.
この日は医療工学科の2010年度化学講義の最終回でした.
1年間を通じて受講した全26回の化学講義をどのように評価するか,だけでなく,この講義から自分自身はどのように成長したかを振り返ってもらうためのアンケートでもあります.
一般教育部に所属する全専任教員を対象に毎年行われている調査です.

調査項目

マークシートによる回答です.用紙の終わりに自由記入欄あり.
I. 授業と教員について
(1) 授業の目標が毎回はっきりと示されていた
(2) 授業はよく準備・計画されていた
(3) 授業内容は、興味や関心を引くものだった
(4) 説明・解説がていねいで、わかりやすかった
(5) 口調が明瞭で、聞き取りやすかった
(6) 板書は見やすかった
(7) テキスト、配布資料は学習の助けになった
(8) スライド、ビデオなどメディア教材は効果的に使われた
(9) 教員は、学生の質問や疑問に対して適切な応答をした
(10) 教員は、学生の理解度を確かめながら授業を進めた
II. あなた自身について
(11) あなたは、この授業での到達目標(シラバスに掲げられた知識や技能の習得)をどの程度達成できたと思いますか
(12) 授業内容を理解するために、授業に出席すること以外で、あなたが特に心がけておこなったことは何ですか。(最大3つ)

  • 授業の予・復習をするように努める
  • 疑問点について教員や友人に質問する
  • 疑問点を解決するために関連図書を調べる
  • わかりやすいノートを作る工夫をする
  • 何が分からないのか、できないのかを考える
  • 与えられた課題にはきちんと取り組む

(13) 新しい知識や技能を得ること以外で、あなたにとってこの授業の成果と言えるものは何ですか。(最大3つ)

  • 物事をみる視野が広がった
  • 授業の関連分野に関する知的好奇心が高まった
  • 問題を発見したり解決する力がついた
  • 物事を論理的に考える力がついた
  • 論述したり表現する力がついた
  • 今後の学習のために必要な学力がついた

III. 総合評価
(14) 総合的に判断して、この授業は自分にとって意味のある授業だった

調査結果

履修者数は最終的に83名.アンケート回答数は69.回答率は83 %.
全専任教員が1科目をアンケート対象に選びます.その平均値は大学公式サイトで公開されています.
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この平均値と比べることにより,次年度(前期に集計した場合は後期)からの講義を改善して行くための指針が得られます.
アンケートは講義時間内に履修者の協力を得て行われるものなので,ここで集計結果を開示します.また,結果に対する私の意見も公開しますので,コメントや提案や反論を歓迎します.

「I. 授業と教員について」

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2011年度の履修者からみた,水曜1限化学講義の評価と,この講義を担当した私に対する評価です.全調査項目において「そう思う」の割会が平均を超えています.
特に,「(1)授業の目標が毎回はっきりと示されていた」,「(5) 口調が明瞭で、聞き取りやすかった」,「(9) 教員は、学生の質問や疑問に対して適切な応答をした」の3点に関しては,「そう思う + ややそう思う」で100 %となっています.
以上から,2010年度の講義そのものは成功していたと私は判断します.

「II. あなた自身について」

講義がうまく進んでいても,それが履修者の成長に結びつかなければ,教育効果が高いとは言えません.成長のためには自主的に学習に取り組む必要があります.今年度の履修者はどのように学習にとりくんだのでしょうか.平均と比べて大きな差がみられた項目について考えてみます.
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まず,「何が分からないのか、できないのかを考える」という項目で,平均の6倍強の回答が集まっています.これは2010年度の具体的な攻略目標を「モル嫌い・濃度計算嫌い・有機化合物嫌いの撲滅」に設定したことと関係がありそうです.実際に計算する時間を設けて,「できていないことに気づかせる」機会をつくったことや,「具体的にどのような計算ができないものか」の例を取り上げてきたこともあり,出席者が自分自身の問題としてとらえたのかもしれません.
一方,平均を大幅に下回る回答数だったのが,「疑問点を解決するために関連図書を調べる」という項目で,これに回答したのは1名だけでした.関連図書を調べなくても引っかからない内容に設定したことと,指定教科書に書かれていない内容を扱う際には講義時間で完結させたこと,関連図書を紹介しなかったこと,などが原因として考えられます.自然科学の情報はWebからも得られるので,この結果は悪いものではないと判断します.
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この講義が履修者に何を残したのか,という点を調査したのが「(13) 新しい知識や技能を得ること以外で、あなたにとってこの授業の成果と言えるものは何ですか。(最大3つ)」です.
ここでも平均と比べて大きな差がみられた項目があります.
回答数が多いものでは「授業の関連分野に関する知的好奇心が高まった」というもので平均の5倍の回答数が集まっています.
ここは関連する自然科学や医療技術,産業技術を毎回紹介し,自然界はすべてひとつにつながっていることと,自然科学が人間の営みのひとつであることを理解してもらうよう努めてきた成果だと判断しています.
私自身が工学系の化学を研究してきたこと,博士(工学)であること,医師との共同研究経験をもっていること,などが,医療工学科の担当とうまく合った面もあります.
一方,回答数が平均を下回ったものでは「論述したり表現する力がついた」という項目への回答者ゼロが目立っています.人数の多い自然科学系講義科目では回答率が低くなる項目ですが,「化学講義を通じて論述や表現力を育てる」という取り組みができるかどうかは定かではありません.

「III. 総合評価」

ぜんぶひっくるめて,この講義はどうだったのでしょうか.
最後の調査項目は「(14) 総合的に判断して、この授業は自分にとって意味のある授業だった」というものです.
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「そう思う + ややそう思う」で有効回答の100 %となっています.

自由記入欄

とても良い授業でした.すばらしい.

今までの化学の授業の中で一番おもしろかったです!

ありがとうございました.化学,楽しかったです.

小さな質問にもちゃんと答えてくれて,わかりやすかったですし,質問しやすかったです.いろんな事(板書,声,課題)が明瞭で,気持ちの良い授業でした.

マイクのハウリングが直れば,もっと受講しやすくなる.スクリーンが小さい.

要約と抱負

以上から,2010年度の医療工学科を対象とした化学講義はうまく行ったと判断します.2011年度もこのやりかたを踏襲しつつ,「関連図書を紹介したら図書館に行くだろうか」とか,「化学講義を通じて論述や表現力を育てるっていうのができるものか」というあたりにサグリを入れてみます.
ひきつづき「モル嫌い・濃度計算嫌い・有機化合物嫌いの撲滅」に取りくみますよ.
アンケートに協力してくれたみなさまに御礼申し上げます.
なお,このコースのシラバスは以下のとおりでした(PDF,762 kB)↓