Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

Twitterは計算問題の指導に向いている

Twitterが触媒となってイロイロなできごとのあった2010年度でした.

化学教育の面でもTwitterは非常に便利なシステムだということを実感したのが,計算問題の段階的指導です.

後期の講義で以下の計算問題を解く演習の時間をつくったことがあります.

(1)水溶液の調製

0.500 mol L-1の塩化ナトリウム水溶液を0.500 L 調製することにした.必要なNaClの質量を計算し,調製手順を述べよ.NaCl=58.5として計算せよ.

(2)溶液の希釈

0.500 mol L-1の塩化マグネシウム水溶液を希釈して.0.0300 mol L-1の塩化マグネシウム水溶液を200 mL調製することにした.必要な0.500 mol L-1塩化マグネシウム水溶液の体積を計算せよ.

(3)濃度をあらわす単位の変換

0.150 mol L-1の塩化ナトリウム水溶液の濃度を,質量/体積パーセント濃度であらわせ.NaCl=58.5として計算せよ.

試験前夜,オンラインにしていたところ,この問題の解き方を質問してきた学生がいました.さっそく一段階ずつ説明.私が一段階ツイートしているとき,学生は実際に計算.一段階ずつ理解を確認しながら解いて行くことができました.

@****** じゃあ,一段階ずつ一緒に計算しよう.「確認:水溶液の濃度計算」の(1)だよね?

posted at 23:24:47

@****** 最初にモルを考えるんだったな.何のモルかというと,必要なNaClのモルだ.そいつは,つまり,0.500 mol/Lの食塩水0.500 L中の食塩のモルだ.計算すると→(0.500 mol/L)(0.500 L)=0.250 molだ.

posted at 23:27:27

@****** 0.250 molのNaClの質量を求めるぞ.NaCl=58.5だから,食塩のモル質量は58.5 g/molだ.こいつを使う.(0.250 mol)(58.5 g/mol)=14.625 gとなるので,有効数字を考慮して丸めこみをして14.6 gだ.

posted at 23:30:13

@****** 有効数字のことはうるさく言わないことにしてるから14.625 gでおk.

posted at 23:30:46

ここまでで一題解決.続いて次の問題.

@****** (2)の解き方か.MgCl2のモルを求めるよ.体積をxとしよう.(0.200 L)(0.030 mol/L)=(x)(0.500 mol/L)となって,x=(0.200 L)(0.030 mol/L)/(0.500 mol/L)=0.012 L=12 mL

posted at 23:37:42

ここでもOKとのことだったので,最後の問題に着手.

@****** (3) 0.150 mol の食塩は(0.150 mol)(58.5 g/mol)=8.775 gで.こいつが1 Lに溶けているんだから,8.775 g/L=8.775 g/1000 mL=0.8775 g/100 mL=0.878 %

posted at 23:42:20

ここまで来たところで,「自分もいっしょにやってみました!」というような声がチラホラ.そうか,計算問題の解き方を中継すると,複数名にメリットがあるのか! ということに気づいたのでした.

というわけで,水溶液濃度計算の質問にTwitter経由で解答し終えたところ.グッドナイトですよ.明日の朝一で化学のテストなみなさまの健闘を祈りますよ.

posted at 23:54:37

この時間帯にオンラインだった学生は他にもいました.私は一人の学生に一段階ずつ解かせていたのですが,実際には同時に複数の学生がこれに「便乗」して解き方を復習していました.個別対応するのと同じ手間で,複数名に指導できたわけです*1

教育の透明性を高めつつ質を保つ

これまでも教育にITをとりいれる方法が試行錯誤されてきましたが,準備する側と利用する側との意志がかみ合っていないことが多く,手間暇かけて用意した割には有効に活用されていない,なんていう体験談をききます.

その点,そのときに浮上した問題を実際に解いてみせながら,それが第三者にも公開され,さらにログが残って復習にもなる,という特徴をもつTwitterは教育にも向いたシステムです.何しろヘタな回答はできません.私の場合,いまの段階で800人ほどのフォロワーの目にとまるわけですから,誤った指導などしようものなら,ツッコミが来るわけです.一種の査読システムにもなっています.

ヒントは身近なところに

e-ラーニングのシステムをどのようにつくって行くのか,各地の大学で試行錯誤している状態ですが,複雑で費用のかかるシステムを組み立てるのではなく,オープンでフリーなTwitterのようなインフラに目を向けることが解決への第一歩なのかもしれません.

追記(2012-05-04)

Twitterを用いた計算問題指導例は,「先進的な授業事例の紹介5. ソーシャルネットワークサービスを活用した化学教育」として,公益社団法人私立大学情報教育協会から発行された「平成22年度 私立大学教員の授業改善白書」に掲載されています.

このブログを書いている人

www.tnojima.net

*1:実はこの数日前にもTwitterのDMで計算問題の質問を受け,それに答えたのですが,このやりとりはオープンではなかったため,再利用できませんでした.