Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(18)浸透圧と透析

台風15号が接近しており昨晩から雨が降り続いています.気温も急に低くなりました.履修者91名中出席72名,出席率79 %.

血液透析

腎臓は血液中の老廃物を除去する器官です.腎臓が機能しなくなった場合には,人工的に血液から老廃物を除去する必要があります.そのための治療法が血液透析(人工透析)です.血液透析治療を受ける患者数は年々増加しており,2010年12月の段階で国内に297 126人となっています*1.国民431人に一人が透析治療を受けていることになります.今回の講義は,人体に関係する液体混合物の取り扱いと性質を理解することを目標とします.

今回のキーワード

浸透,浸透圧,半透膜,ファントホッフの法則,生理的食塩水,等張溶液,低張溶液,高張溶液,コロイド,コロイド溶液,懸濁液,分散質,分散媒,物理吸着能,チンダル現象,ブラウン運動,透析,透析膜

浸透圧

溶媒は通り抜けられるものの,溶質は通り抜けられないサイズの穴をもつ膜(半透膜)を隔てて,希薄溶液と濃厚溶媒とが接しているとき,希薄溶液から濃厚溶液に向けて一方的に溶媒がしみこんで行きます.この現象を浸透と呼びます.浸透に逆らって濃厚溶液の体積増加を抑えるために必要な圧力を浸透圧と呼びます.

ファントホッフの法則

浸透圧π,溶液のモル濃度C,気体定数R,絶対温度Tの間には次式が成り立ちます.
π = CRT
ここでC = n/Vを代入すると次のようになります.
πV = nRT
Vは溶液の体積,nは溶質の物質量です.
また,n = w/Mを代入すると次のようになります.
πV = wRT/M
wは溶質の質量,Mはモル質量です.
この関係を用いると,浸透圧測定を用いて溶質の分子量を測定することができます.

生理的食塩水

質量/体積パーセント濃度0.9 %のNaCl水溶液を生理的食塩水または生理食塩水と呼び,人間の体液と等しい浸透圧をもちます.
細胞内外の水溶液の浸透圧が等しいとき,細胞は等張溶液の中に存在しています.細胞内溶液の浸透圧よりも低い水溶液は低張溶液と呼ばれます.たとえば純水は低張溶液です.水に赤血球細胞を浸すと,細胞内に水が流れ込んでくるために細胞は膨張し破裂します.
一方,細胞外溶液の浸透圧の方が高かった場合,細胞内の水は細胞からしみ出して行きます.その結果,細胞は収縮します.このような溶液を高張溶液と呼びます.

水の混合物いろいろ

水の混合物を,水と混ぜられている粒子の直径で分類してみましょう.直径1 nm以下の粒子と均一に混ぜられた水を溶液と呼びます.たとえば食塩水は溶液です.直径が1 nmから100 nm程度の粒子が分散した水はコロイド溶液と呼ばれます.たとえば牛乳は水に油脂や蛋白質が分散したコロイド溶液です.さらに粒子径が大きくなり,100 nm以上になると懸濁液になります.私たちの血液は懸濁液です.赤血球や白血球は水に溶けているのではありません.

コロイドの性質

代表的なコロイドの特性を紹介しました.

物理吸着能

たとえば活性炭.細かい空間に低分子が吸着されるので,空気清浄機や防毒マスクに用いられています.

チンダル現象

映画館の投影機からスクリーンに向かって見える光の通り道,木漏れ日の通り道,雲の隙間から地上に差し込む光の道.これらは空気中に分散した水蒸気やホコリなどによって光が散乱されてみられるものです.これらの微粒子はコロイドです.

ブラウン運動

液体中のコロイド粒子には,溶媒分子が衝突して来ます.そのため,コロイド粒子はランダムに運動します.これがブラウン運動です.

透析

半透膜よりも大きな穴の開いた膜(透析膜)で袋をつくり,この中に種々の粒子径の粒子が含まれるコロイド溶液を入れておきます.この袋を溶媒に浸けておくと,膜の穴よりも大きな粒子径をもつ粒子だけを袋の中に残したまま,低分子を除去することができます.これを透析と呼びます.
透析は生化学研究において,細胞を構成する種々の材料を分子量サイズでふるい分ける際に用いられています.医療では腎不全患者の血液浄化に用いられています.

今週はできるかな計算問題

牛乳に含まれる蛋白質成分の一つにカゼインがある.この蛋白質600 mgを水に溶かし,体積を100 mLとし,25 °Cにおいて浸透圧を測定したところ,650 Paであった.カゼインの分子量を求めよ.気体定数はR = 8.31 Pa m3 K-1 mol-1とせよ.

正答20名,桁ミス多数.

●頑張ります・・・●ざせつ●細胞の中をみてびっくりしました.ちゃぷちゃぷじゃないんですねー.あんなにびっしりなんですねー.●m3の消し方がわからなかった.まだまだ自分青いっす.●予習・復習をこれから毎週きちんとやります!!●できた!!と思う.●むずかしかったです.●ざせつ●らくしょうだぜ!!●ざせつ●ざせつ●ざせつ●ざせつ●難しいです●ざせつとみせかけての・・・余裕●まだ計算問題にやりづらさを感じるので復習して慣れるようにして行きたい.●途中でわからなくなった●ざせつ●ムリでした●むりでした・・・・●ざせつ!!●挫折●

試験までにできるようになるんですよ,いいですね.

質問

●コロイドは1 nmから1000 nmではないのですか?

厳密にサイズが決まっているわけではありません.1000 nmくらいまでをコロイドと考える場合もあります.

●けんだく液のときは溶かすやつと溶けるやつは何て言うんですか?

コロイド溶液と懸濁液のあたりは用語が混乱状態にあります.コロイド溶液の場合と同じく分散媒と分散質と呼んでいます.

●けいたい電話の光でチンダル現象をつくるにはどうすればいいですか

暗い部屋の中でホコリを立ててパネルで明るい色を出しながら横から見れば光路が見えるかもしれません.

●台風の説明がききたいです

物理学担当のほうへどうぞ.

●食塩水は半透膜をとおるのなら,食塩水では浸透圧現象はおきないということなのですか?

膜にはいろいろなサイズのものがあります.食塩を通す程度の穴が開いている膜だと浸透圧現象は起きません.

次回予告

酸と塩基とpHについて2回に分けて学びます.
講義内容のプリントを予習してくること.

コメント

●透析のしくみがよくわかった●透析の話がおもしろかったです●今日も医療のことが化学と関連していておもしろかったです.いつかダイラタンシーとかいうの実験でやってみたいです.●雨嫌い学校休みになればいいと思った.化学はいいけどw

ダイラタンシーは片栗粉と水で(たぶん)できるキッチンケミストリー.コロイド化学というよりも粉体工学の扱う範囲.粉体工学は工学系の化学が扱う実用的な学問のひとつ.