Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

看護学科の化学講義(19)有機化合物の世界

私たち生物の構成要素をふくめて,自然界に存在する過半数の化合物は有機化合物です.有機化合物に対する理解を深めることによって,分子の視点で生命現象を理解しましょう.

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くわしくは前回の講義録を参照↓

分子構造と生理活性

サリドマイドは,半世紀前,副作用の少ない睡眠薬として販売された薬品です.しかし,サリドマイドを服用した妊婦から,手足に奇形をもった子供が生まれてくるという事件が起こりました.サリドマイドには光学異性体が存在し,片方は睡眠薬として作用するものの,薬品合成時に副産物として生じるタイプには睡眠薬としての性質はなく,かわりに催奇性があったのです*1.分子量は同じ,化学的性質も同じ,しかし生理活性がまったく異なる,といった分子がこの世の中には多数存在します.有機化合物の構造について理解を深めることは,健康と生命を守る仕事をして行くうえで重要なことなのです.

●薬の話,こわいですね.ていうか,薬って小さいのにすごい作用ですよね.そういえば前に薬とお酒を一緒に飲んではいけないと聞いたのですが,どうしてですか? どうなってしまうのですか?

●左手は毒,右手は薬って恐いですね.

●構造が鏡写しで異なると,恐ろしい物質になる話はすごいなぁと思った反面,恐いなと思いました.有機がんばります.

有機化学の世界はどのようなしくみになっているのか

世の中には数千万種類の有機化合物が存在し,それらの数以上に有機化学反応が存在します.しかし,有機化合物の世界がどのようなしくみになっているのかを先に理解しておけば,何を理解し,何を覚えるべきか,何には労力を注がなくてよいのかがわかります.そこで,まずはそのための準備段階.以下の4項目を確認しました.

  • 登場する元素はC, H, O, Nの4種類.ときどきPやSやハロゲンも登場する.
  • 反応は,付加,脱離,置換,転位,の4パターンだけ.なんだかんだいってもこれらの変形が大半である.
  • 基本骨格は炭素と水素の2種類だけ.まずは炭素がどのようにつながっているのかを考えよう.
  • 分子の反応性も性質も,分子がもつ電子に注目することによって説明できる場合が多い.電子に注目しよう.

詳しくは以下のPDFに掲載↓

●テストで構造式とか命名法とかがないのは嬉しいです!

●高校では暗記ばかりでしたが,大学ではしくみを考えるんですね.

●メタン,エタン,ブタンなどの名前は高校でテストがあったのでなつかしいです.

●高校の時はよく名前の付け方,方法から習いました.確かに例外が多くて,やっていても不便でした.あれは覚えなくても大丈夫なんですね.安心しました.

●メタン,エタン,・・・という範囲は高校のときになかなか覚えられず,テストで100点満点の8点しか取れなくて,放課後の理科室でマンツーマンで補習されました.

●今日から有機に入って,高校のときにメタンとか覚えたのと,この部分のテストで最低点数をだしたのを思い出しました.

●高校の化学の先生がわかりやすいけど,とても怖い先生で,必死にアルカンとかの名前の表を覚えた記憶があります.

●高校の時は理屈とかなにもなくて,とにかく暗記しろと言われて勉強してましたが,今日の授業をきいていて基礎をしっかりすれば応用が効くんだなと思いました.

●あれだけ高校の時覚えたのにエタノールの構造さえ覚えていませんでした.でも先生が大学ではそんなことしなくていいって言っていたので,少し安心しました(笑)

覚えることに労力を注ぐのは,やめよう.

炭化水素いろいろ

脂肪族と芳香族に分かれること,脂肪族は飽和脂肪族と不飽和脂肪族にわかれること,さらに環状脂肪族も存在すること,を説明しました.これらの基本骨格構造にいろいろとパーツがついて分子が機能をもって行きます.

続いて炭素数6までの直鎖状アルカン,ロウ,ポリエチレンを分子量に沿って表にし,さらに比較のためにイソブタン,エチレン,アセチレン,プロピレン,プロピン,ブタジエン,シクロヘキサン,ベンゼンを引っ張り出してきて性質を比べました.

●分子の長さでこんなにも性質が変わるのかと思った.

分子のかたち

メタンは正四面体,エタンはメタンを2個くっつけたようなかたちで,C-C軸が自由回転します.この結合はσ結合です.

エチレンになると平面構造をとり,平面に直交するπ結合をもちます.二重結合の1本はσ結合,もう一本はπ結合です.

アセチレンになると,もおう一本のπ結合をもちます.

エタンは自由にC-C軸を回転できるのですが,エチレンとアセチレンとは自由に回転させることができません.それはπ結合が形成されているためです.

●今日は書くことがいっぱいあってノートとるのが大変でした.

●今日は書くことがいっぱいでしたー.表のところとかがグチャグチャになっちゃいました.図だけだとわかりにくいけど,模型があったから構造はなんとなくわかりました.あの模型は先生の手作りですか? ところでアルカンって何ですか?

●模型があってわかりやすかったです.+とか-とかに○がついているのは何か意味がありますか?

●後でやる,って書かれると,ノートにどう書けばよいのかわからなくて少し困ります.

●高校の時やって苦手で苦手でどーしようもなかったので,不安です.

●私は有機物好きです.

●有機,今日は普通に化学だなーと思う授業でした.

●受験で化学をしっかり勉強したはずなのに,さいきんぱっと化学式が思い出せなくなってきました.やばいです.

●久しぶりに書いてみると,なんだかとっても心もとないです.ベンゼン環とかキレイに書けなくなっていそうです.

●有機を勉強したのがすごく久しぶりで,高校のときにやっていたことを忘れてしまっていました.

●思ったよりも覚えてました!! 理解できると面白いですね.

●高校のときの有機はキライでした.また教科書引っ張り出してきて勉強します!

●高校でやったのと混ざって,理解が深まりました.とてもねむいです.

●今日の構造の部分は難しかったです.

●難しかったです.

●高校で有機化合物をやったことがなかったので,今日の授業は難しく感じました.CとかHとかがすごく重要なんだなーと思いました.

●初めて有機化学というのをやりました.最初は面白そうだと思っていたけれど,だんだんよく分からなくなっていってしまいました.少しずつ理解して行きたいです.

●アセチレンやエチレンの構造 難しかったです.π結合とか初めてみました.

●π結合というのは初めてやった話で,化学はまだまだ深いなと思いました.

●反応がたくさんあって,結合がたくさんあって,難しかった.でも有機のほうがパズルみたいでおもしろい.

●エチレンやアセチレンのように二重結合や三重結合の結合にもσ結合とπ結合の2種類があって,全く別のものだと初めて知りました.

●π結合には電子が行ったり来たりしていて,その電子が陽イオンと結合,その関係で陰イオンと結合して反応が起きているから,二重結合や三重結合をもつものは反応性が高いのだな・・・と納得しました.おもしろかったです!

●今まで二重結合,三重結合も全部同じ結合だと思っていたけれど,π結合とσ結合から成ると知って驚きでした! なんか本質が分かった気がして,最後の方,すごくおもしろかったです.

●高校で有機やりましたが,二重結合がσ結合とπ結合の2本であるということを知らなかったので,なんか新鮮でした!

●高校とは違った方法で講義していただいているので,新鮮で楽しいです.

●三次元的な話がとてもおもしろかったです.

●意外とおもしろいですね.

●反応のパターンは4種類あり,反応のしくみすごいと思いました.

●難しかったけど面白かったです.反応の名前としくみ,覚えるようにします.

●ベンゼン環についても後々やるんですか?

●やっぱ有機って苦手なんですけど頑張ります.

有機反応パターンその1:付加反応

高校の教科書には「エチレン+水→エタノール」という式と,その化学構造式が出ています.しかし,そのしくみがどうなっているのかは説明されていません.ここをくわしく見て行くことにしました.

まず,酸触媒存在下,H+がエチレンのπ電子にトラップされます.これによってエチレン分子が+の電荷をもちます.ここにOH-がアタックするのですが,H+がトラップされている側は空間的に混雑しているので,その反対側からアタックして行きます.こうして水が付加して,エタノールのできあがり.

●付加反応の説明すごいわかりやすかったです.

●付加反応のしくみは初めて知りました.ただエタノールになる・・・と覚えるだけでなく,理由もしっかりつかめて,納得できるので,頭の混乱が避けられます.助かります.

高校化学未習得者も多いコースですが,有機化学のイントロダクションはうまく行ったようです.

配布物

そのほか

●寒いです.眠いです.

●寒いですね.冬ですね.

●忘れ物を防ぐ→フセンにメモを書いて目立つところに貼る

●コンタクトの洗浄液についてなんですが,私が使っているものは6時間つけておくと中和が完了するので,すぐ使用可能と書いてあります.最近,12時間以上つけているのですが,目に入れたらちょっと痛くて,しみます.なぜですかね? 室温が低ければ中和に6時間以上かかるとありましたが,決して低くはないと思うんです・・・.

一つの可能性は中和剤が古くなっていて,十分に中和されていないことです.新しい中和剤を買ってきて問題なければ,これが原因です.

次回予告

以下の項目を解説しながら,電子の動きで有機化学の世界を見ていきます.

  • 脱離反応
  • 置換反応
  • 付加重合反応
  • 異性体
  • 共役二重結合
  • 導電性ポリマー
  • 芳香環

●有機物質が日常生活で実際にしている役割を紹介してくれると関連して覚えやすいかなと思います.

●身のまわりは有機化合物でできているんだと今日の講義で改めてわかりました! 自分の身体もそうですよねー!

プラスチックの化学をやりますよ.

リンク

www.tnojima.net
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*1:その後の研究で,ここはちょっと違うことがわかってきたのですが,今回は省略します.