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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

ナガミヒナゲシ(植物)

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この季節,道路脇の植え込みや,空き地でよくみかけるオレンジ色の花があります.

「ナガミヒナゲシ」というケシの仲間で,帰化植物のひとつです.

数年前からよく見かけるようになっていたのですが,名前を知ったのは先週の「ケシ観察会」のときでした.

観察会の際に,呼びかけ人の福田達男先生からスライドを使ったケシの解説講座がありました.そのなかで,「麻薬原料として利用*できない*ケシの仲間」の解説があり,その一つとしてこのナガミヒナゲシが紹介されたのです.

ナガミヒナゲシは10年ほど前から爆発的に国内で増えています.北里大学相模原キャンパスの周囲にも咲いています.*1 繁殖力の強い植物なので,今のところ増える一方のようです.

しかし,だからといって日本中がナガミハナゲシに覆われてしまうという事態になるわけでもなさそうです.同じ場所に同じ植物が何年間も繰り返し茂り続けるのは困難だからです.これには「忌地現象(いやちげんしょう)」とよばれる土壌の変化が関係しています.植物が育つために必要な成分が欠乏して行き,次第に育ちにくくなる現象です.

忌地現象によって ある植物が育たなくなると,今度はその土壌で育ちやすい別の植物がその土地を乗っ取りはじめます.そういうことが何度も繰り返されて行き,同じ土地であっても数十年経つとまったく異なる種類の草が茂っている,ということも珍しくないようです.

何か特別な関心でもないかぎり,身の回りの植物の種類が毎年少しずつ変化していることに気づくことはありません.それでも私たち人間の時間スケールとは別の時間スケールが植物の世界にはあり,そしてそこには,例えば土壌中に含まれる植物栄養成分の化学といった,興味深い化学の世界が隠れています.

*1:たとえば相模原駅からバスに乗り,麻溝車庫バス停で下車すると,すぐ目の前のフェンスの下に咲いています.