Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

もちつき:デンプンの化学

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今日は近所の餅つきに参加してきました.

餅づくりに使われる米は餅米です.餅米は,ご飯を炊くときに使われるうるち米とは異なる種類の米です.どちらも主成分はデンプンなのですが,うるち米がもつデンプンと,餅米がもつデンプンとでは,組成が違うのです.

餅米のデンプンは,そのほとんどがアミロペクチンと呼ばれる分子です.アミロペクチンはグルコースが枝分かれしながら連結した天然高分子化合物です.水中では枝分かれした鎖が絡みあうため,蒸すと粘り気を示します.この粘り気が,餅独特のネバネバした性質の元になります.

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↑アミロペクチンの分子構造

一方,ご飯の材料となるうるち米には,アミロペクチンの他にアミロースが含まれます.アミロースもアミロペクチンと同様にグルコースが連結した高分子化合物ですが,枝分かれ構造を持ちません.そのため,餅のような粘り気を示しません.うるち米のデンプンには15 %から25 %の割合でアミロースが含まれるので,蒸しても餅のような粘り気が出ません.

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↑アミロースの分子構造

同じグルコースから組み立てられた物質なのに,グルコースのつながり方が異なると性質が変わります.高分子化合物の世界にみられる興味深い性質です.

昨年の化学講義では,「酸素を含む有機化合物」を扱った際に,身の回りの化合物の例としてグルコースとデンプンについても説明しました.しかし,時間の都合で,こうした食品化学についてじゅうぶんに説明できませんでした.指定教科書下巻や,高校化学IIの教科書・参考書,それに,多くの有機化学の本にはデンプンのことが書かれています.私たち生物の燃料でもあるデンプンについて,いちど調べておくことをおすすめします.

さて,本日の餅つきは太郎木工という家具製作店を開かれている関さんの木工所で行いました.太郎木工のブログに本日の模様が出ています.