Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(4)原子の構造その1

小雨.また寒さが戻ってきました.出席者数82名.今回も,別科目からの履修科目変更を申し出てきた学生がいました.そろそろ履修者数が確定する頃です.

前回やったこと・質問・コメント・その他紹介

以下のようなコメントを紹介するとともに,質問に回答しました.






次元と単位と数値

ナノメートルであらわされている測定値をマイクロメートルであらわす,とか,m/sであらわされている速度をkm/hであらわす,というような変換作業はひんぱんに出て来るものですが,作業中のにミスを犯しがちです.また,単位を別のものに変換する際にもミスを犯しがちです.こういうミスを犯しても,在学中はせいぜいテストで減点される程度で済みますが,医療現場では人命に関わる問題になる場合もあります.というわけで,今回は「次元と単位と数値」について確認しました.
基本は比例計算です.

●比例計算のやりかたで、こんなに簡単に計算出来るとは驚きです(^^)!! 先生の授業は、具体的な例を出してくれるので、とてもありがたいです!!!
●小数の計算方法はシンプルでわかりやすいです! 解決しました! 次元と単位の関係は物理で無意識にやっていました.先生と同じやり方で安心しました♪
●小数の計算は役立ちました。僕の身長は計算したら1560000000 nmでした。少し背が高くなった気がします。
●単位計算が苦手で昨日も物理のm/s→km/hに変換するのを間違えてしまった。けど、今日教えてもらってできるような気がした。
●今までよく小数計算で間違えることがあったけど、今日覚えた計算方法はわかりやすかったので良かったです。
●単位系の悩みが解消しました。ぜひ物理学の授業をやってほしいです。
●単位を変えるときにいつもごっちゃになっていたけど、今日のでわかった気がします。
●最初の単位の話はある程度できるほどだったんですが、比例式を使った計算はとても分かりやすかったです。今度からしっかり単位を書きたいと思います。
●単位を変えるやり方が意外に簡単で理解しました!!
●単位計算は役に立った。SI単位も解決しました。
●授業の前の単位の話は理解できました。あまり難しく考えないで計算していきたい。
●単位計算についてよく分かりました!
●単位と小数計算がすごくためになった。ありがとうございます。
●小数点の計算は頭の中で計算するだけでなく、自信がないときはちゃんと比例をつかって解こうと思う。
●単位系の問題,解決しました。
●単位がよくわかった。
●単位はバッチリです。
●小数の計算、役に立ちそうです。
●次元と単位については分かっていたつもりでしたが、改めて説明をきいて、より深く理解できたのでよかったと思います。
●単位計算簡単にできた。
●次元や単位について理解できました。
●単位計算、小数の計算は医療系の学生にとって重要で、少しのミスも許されないので、早く身に付けたいです。
●小数の計算とかはわかっているつもりになるからまちがっていても気づかないことが恐ろしいと思いました。小数計算のポイント役に立ちました!
●単位は昔からよく事故を起こしていたので、意識しながら試験に臨みたいです。
●役にたった.
●単位は絶対に間違えないようにしたい.
●単位のやつがわかりやすくて、まちがえずにすみそうだと感じた。
●計算間違いをなくさねば。
●単位計算これでちゃんとできそうです。
●単位の計算がすごく苦手だったので、今日の話はすごく良かったです。ちなみにですが、僕の自転車をこぐペースは時速 3 kmです。
●単位や計算ミスがこれでなくなるといいな・・・(トラウマ)
●将来の仕事でミスをしないようにするためにも、単位計算などは正確にできるようにしておきたいです.
●単位の計算は、まずSI単位を覚えなければと思いました...単位計算は高校では詳しくやらなかったので、ちゃんと復習しようと思う。
●単位とか計算とか試してみます。
●単位の話、細かい式にすると考えすぎて余計難しいような・・・

予想していたよりも多数の学生が,今回の解説を有意義なものと考えたようです.これで[N]とか[Pa]とかをSI基本単位で表す必要が生じても大丈夫ですね.

原子の構造(p60)

高校までの化学で学んでいる内容が多く含まれる部分なので,各自で予習をしておくよう,連休前に自習プリントを配布しました.その内容を確認する意味で,少し速いペースで原子の構造について解説して行きました.

キーワード
陽子,中性子,電子,原子核,質量数,同位体(アイソトープ),元素記号,原子番号,原子量,電子配置,エネルギー準位,エネルギー殻,電子殻,基底状態,励起状態

●原子核の周りがなぜK, L, M・・・とつづくのかは高校で聞いたことがありました。
●電子殻がKから始まるのはいつも不思議でしたが、大人の事情があったんですね。大人って大変ですね(笑)
●高校の時にM殻は原子が8個まで収まると覚えていたので、間違えていたことに気づいて良かったです。
●どうしてK殻から始まるのかとなんとなく疑問にはしていましたが、長年の謎が今日ようやく解決しました。
●いつも何でK殻から始まるのか疑問に思っていたので、答えがわかったちょっとスッキリしました。
●懐かしの「原子の構造」をやった。同位体のある原子の原子量の計算が苦手です。
●原子の内部構造につちえ今までしっかり理解できなかったけど、すごい分かりやすかったです。
●原子の構造習ったのが3年前なので、かなりなつかしく感じた。
●昨日の授業でラジオアイソトープについて学んだばかりだったので、同位体の話のときにテンションが少しだけ上がりました。

励起状態と基底状態

原子にエネルギーを与えると,電子がエネルギー準位の高い軌道に移動する場合があります.この状態の原子が励起状態です.ここから電子が元のエネルギー準位に戻った状態が基底状態です.励起状態から基底状態に変化する際,エネルギーが放出されます.多くの場合は光エネルギーです.これが様々な場面で応用されています.また,化学的な変化によっても物質は励起状態となる場合があります.この場合も励起状態から基底状態へ変化する際にエネルギーが放出されます.(1)サイリューム,(2)ホタルの光,(3)ルミノール反応,について簡単に説明しました.
また,ブラックライトをポリエステル繊維やコピー用紙に照射して青い蛍光が生じることをデモンストレーションしました.このとき,実験用保護めがねのプラスチック素材が短波長励起光を通さないことも示しました(めがねの形の影ができる).

●実験用メガネは紫外線を本当に通さなかったので、化学の素晴らしさを感じました。
●ホタルの光,みてみたいです.
●例えがあったので、励起が理解できました!!
●エネルギー処分で光るのなら もしかしたらヒトも違う進化をしていれば光っていたかも・・・?
●励起って何てよみますか? 爆弾ゲームの例はわかりやすかったです。
●基底状態と励起状態は初めて知りました。
●基底状態と励起状態の戻ることとかよくわからなかったです。
●基底状態のはなしがよくわからなかった
●サイリュームやホタルが光るしくみがわかってよかった。
●サイリウムのしくみはもっと簡単なものだと思ってました。
●化学エネルギーを光エネルギーに変えるようにして光として利用されているものがあったりすることがおもしろかったです。
●化学エネルギーを光エネルギーに変えている、ルミカライトやホタルの光、ルミノール反応いろいろあり、びっくりしました。自分も何かこれを利用して何か作りたいです。
●前からどうして白い服が青く光るのかっていう疑問が今日分かってすごくスッキリしました!
●蛍光塗料などが可視光でエネルギーを放出してるのは知らなかった。
●紫外線の光を出すライトがとてもほしい。
●ホタルがエネルギー処分に光を出していることに驚いた。
●身近な現象が励起状態によるものということを知ってびっくり!! このような、高校では習わなかったことをもっと授業でやってほしいです。
●放射線物理学で励起を学んだときは少し分かりづらかったけど、この講義では細かく具体例も出して説明したので、とても分かりやすかった。1秒の基準がいがいだった。
●ルミカライトが化学反応で光っているのは知っていたが、励起させて光らせているというのは知らなかった。他にもいろいろなところで励起が使われているんだなと思った。
●基底状態と励起状態は色々なところに使われていて深いなぁ・・・と思いました。
●電子がもとの位置に戻った状態を励起状態というのかと思っていたけど、戻る前の状態のことをいうのだと知りました。
●よくわからずに何となく買っためがねがスゴイものだと知りました。アレをかけて外出しても眼球が日焼けしない!
●実験で使うゴーグルには紫外線を通さない機能があったんですね。液体が目に入るのを防ぐためだけだと思ってました。器具にはきちんと意味があるのだなぁと感心しました。
●ライトを使った説明は分かりやすかった。
●ブラックライトで光りますって世の中変なものがあるんだなと思ってましたが、原子の世界の反応だったのですね。
●蛍光灯とかってそういう仕組みで光っていたのか!と思いました。励起とか基底とか、放射線物理学とリンクしているのですね。
●蛍光灯のように身の周りにも、励起状態と関係することがあると分かってなんか感動しました。化学面白いです!!
●1枚の紙に化学技術が使われているのに驚きを感じた。
●子供の頃よく見ていたホタルの発光が基底状態,励起状態が関連してるとは全くわからなかったのでびっくりした。
●励起の説明のとき、先生が階段をのぼりおりしていたのが可愛かったです。もちろん説明もわかりやすかったです。
●ホタルはすごいことをしているんですね。
●エネルギーの放出による光が実社会にも役立っていると分かった。
●洗剤を使ってきれいになるのは汚れが落ちていると思っていたので、がっかりした。
●コピー用紙に蛍光塗料が含まれているのは初めて知りました。
●発光現象がたくさん身近にあってすごいなと思いました。
●ちり紙は発光をあまりせず、コピー用紙は鮮やかに発光していて、身の周りにそんなに応用されているとは思わなかった。

原子時計

エネルギー準位間の移動時間に基づいて時間を測定することができます.これが原子時計です.「1秒」の定義
133Csの原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍に等しい時間
を紹介しました.

●1秒の定義とか、気になったことがあったけど、“そういうことだったのか!!”と驚いた。
●1秒を再定義したのに、セシウムを使ってさらに91億倍してるのにはおどろいた。
●セシウム時計をつくってせいかくな時計で目覚まし時計を作れば朝起きられるだろう。
●1秒の定義っていうのも初めて知ってとても興味深かった。
●1秒についての定義について初めて知りました!!

周期表

カラー周期表を配布しました.活躍するのは来週からです.

●周期表がカラーですごく分かり易かったです。
●周期表ありがとうございます。部屋に貼ってひまなときにでも見ときます。
●元素周期表のプリントが面白かったです。
●プルトニウムPuって見るとなんだか興奮しちゃいます! ローレンシウムLrも好き!
●元素周期表のプリントがすごく面白かった。こんなにも身近なもので周期表ができていて見ていてとても楽しい。

全般

●今日も楽しかったです
●先生は今日も熱かった。
●わかりやすい授業なので眠くならないし、化学が楽しくなってきました!!
●先生と高1のときに出会っていたら、今、化学が好きだったかもしれない・・・
●授業楽しかったです。次は授業おくれないようにします。。
●高校の授業と、講義の内容は今のところほとんど同じなのにこんなに楽しいと感じるのは何故だろう・・・。 昔 理解したことをもう一度違う人から説明されるから楽しいのだろうか・・・。
●相変わらず説明がわかりやすいです。でも板書のアルファベットが読みにくいです.
●相変わらず、面白い授業でしたー♪
●すごく眠かった.
●高校ではなんとなく疑問に思っていたことが、解決していくので、とても気持ちがいいです。
●勉強も睡眠も大事。
●わかりやすかったです。
●とても興味深い授業でした。
●今日やったところも放射線物理と同じところだからすごく両方の理解が深まります。
●聞きやすい話し方で、あきない授業なので、90分が苦じゃなくあっとゆう間な気がします。
●前のSI単位のときも、今回の電子配置のときも、化学には多くの大人の事情があるんだなー・・・と思いました。
●高校では電子殻としか教わらなかったので、エネルギー準位やエネルギー殻という呼び名もあることを初めて知りました。
●最後眠かったけどがんばりました。
●昨日の放射線物理学と少し似てました。だから復習になったので良かった(^^)
●とても分かりやすかった。ばくはつがなくてさびしかった。
●説明が分かりやすく楽しかった。
●とても分かりやすくよく理解できた
●自分の身の周りにはいろいろな化学があってびっくりした。日常生活でもちょっと化学を意識してみると,いろんなところにたくさんの化学があっておもしろいなと思った。

その他

●p147総合問題1a, bはかなりえげつない問だと思います.純粋な人にはつらいのでは? まあ,このクラスにそんな人がいれば,の話ですが・・・。
●先週、風邪で授業を休んでしまった。今日授業を受けてだいぶ授業が進んでしまっていて焦った。友達にノートを写させてもらいます。
●少し強めのカゼで休んでいて、今日が久しぶりの化学でした! もうカゼにはかかりたくありません。
●最初に、前回わからなかったグラフが理解できてよかった。
●天文のはなしがおもしろかった
●高校である程度やったので復習になった。
●ビートルズのIn my life好きです。
●ゴールデンウイーク中に復習しようと思っていたけど、遊んでしまいました。焦ってます。頑張ります。
●たまによく見えない字があるので、あまり小さな字でかかないでもらえると嬉しいです。
●化学の裏話(1秒の話みたいなの)をもっと聞きたいです。
●放射線物理学と同じ所があったことに驚きました。原子の性質を利用して日常生活にもいかされていることを知り、自分も今日からはそういうことを意識しようと思いました。

質問

周期表を見て思い出したのですが、原子番号が100あたりの「ウンウンなんてらビウム」というのは、名前を適当につけたと聞いたのですが、本当ですか?

適当ではなく.数をあらわすラテン語を充てています.たとえば今回「コペルニシウム」の名前がつけられた元素は,以前はウンウンビウムと呼ばれていました.これは「112番元素」を意味します.

先生がサラっと流した「水素の核融合でできるヘリウム」の方が気になりました。ドルトンの説はもう古いのですかね。

水素からヘリウムができるのは核融合反応です.これは化学反応とは異なる反応です.ここいう「ドルトンの説」というのが何にあてはまるのか定かではありませんが,化学に関する説であれば,次元の異なる問題です.

基底状態、励起状態がイマイチ・・・ 結局は出たり、戻ったりを繰り返すんですか?

今回は単純な原子内で軌道から軌道へ電子が移る簡単なケースで説明しました.この場合,電子がエネルギーを与えられて外側の軌道に引っ越した状態が励起状態となり,引っ越し前が基底状態となります.電子に着目した場合,軌道を出て別の軌道へ入る,そこから元の軌道へ戻る,という動きをしています.

原子の構造って,何故わかったんですか? 100年前とか、見ることもできないのに。

いくつかの実験が組み合わさって明らかになりました.たとえば結晶に放射線を当てた際にみられる散乱現象を説明するためには,微小な核をもった粒子というモデルが自然でした.具体的な歴史については以下のリンクにくわしい説明が出ています.

数字の7です.1と確実に区別するために斜線を入れてあります.zを2と区別する際に入れるのと同じ意味をもちます.

プリントの周期表のマグネシウムの説明中に、優れた脊髄合成反応剤とありますが、どんなことが起こっているのですか.その他はよくわかりました.

文字がかすれていたようですねぇ.有機合成反応剤と書かれています.

小数の算計、単位は大丈夫です。高校時代にm/s → km/h は×3.6をすれば良いと教えられたのですがやっぱり算計をちゃんとした方がいいのですか?

速度の変換をひんぱんにやるようだったら,そういう係数を覚えておいてもよいでしょう.しかしよのなかにはホントにさまざまな変換作業があり,それらに関してすべて係数を決めておいて暗記しておく,というのは現実的ではありません.どのような原理で計算を進めればよいのかを理解する方が近道です.

希ガスの最外殻は飽和状態ではありませんが、安定しているのはどうしてですか?

Heは2個で安定,Neは8個で安定です.Arは18個まで電子を収納できるM殻が最外殻電子軌道ですが,ここはさらに「小部屋」にわかれていて,まず8個入ったところでその部屋が満員になるのです.電子殻の話と軌道の話は少々ややこしいところがあります.以下,わかりやすい説明です (左巻建男 編著,「新しい高校化学の教科書」,2006年,講談社,ISBN4-06-057508-6).

3階(M殻)の定員は18名だが,この階の入り方は少しばかり複雑だ.2階(L殻)同様8名まではすぐに入れるのだが,次の2名はその上の4階(N殻)に入る.その後,再び3階にもどり9,10,11,・・・・,18個となる.

新しい高校化学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

新しい高校化学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

この,まず8個が収まった状態,というのがArの電子配置です.

原子量=天然に存在する同位体の存在比を考えた平均値、となっていたがどうやって調べるのか。

主に質量分析法という分析方法が用いられます.これはサンプル中の原子一個一個の質量を測定する方法です.

次回予告

次回は5月19日,今回の続きをやった後,第4章「原子の結合」に進みます.