Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

化学講義(12)原子と放射能

CE & RTコースでは前期最後の化学講義です.前期試験範囲は本日の講義内容までとなっています.

前回の講義に対するコメントの一括紹介

f:id:hrmoon:20090715183916p:image

これらをひととおり紹介し回答しました.詳細は→7月8日のエントリー

化学平衡ミニテストの解説

前回の講義途中で平衡移動に関するミニテストを行いました.その解説と正答率の紹介.熱が関わってくるとイメージしにくいのか,誤った解答をする例が出てくるようです.

質量欠損

質量はエネルギーの一形態です.核内で陽子と中性子をつなぎとめている結合エネルギーが核分裂の際に放出されること,その際に核の質量が減少すること,しかしここで減少する質量はエネルギーとして熱などに変換され,それらエネルギーの総和は核分裂の前後で保存され,質量を含むかたちでエネルギー保存則が成り立つこと,を説明しました.

続いて,人類史上初の核爆発実験となった1945年7月15日のトリニティ実験のムービーを上映しました.

D

核分裂のエネルギーを最も効率よく利用した応用例は原子力発電ではなく,原子爆弾です.冷戦時代,アメリカ合衆国とソビエト連邦とでは核兵器の開発競争を続けていました.1961年,人類史上最大級の核爆発実験が行われました.その様子も上映しました.

D

原子と放射能 (p181)

講義では核化学分野で出てくる語句の説明をしました: 崩壊系列,放射能,放射線,α線,β線,γ線,放射性核種,放射性同位元素,ラジオアイソトープ,半減期.

原子壊変の反応速度論

–dC/dt = kC

から出発して微分方程式を解き,観測から時間t経過後の残量Cを求める式

C=C0e-kt

を導きました.

教科書には単に

n半減期後の残量=初期量×(1/2)n

-------生命科学のための基礎化学 無機物理化学編 p190

とあるだけです.これだけでは任意の時間の残存量を計算することができません.そのため,上記関係式を導出しました.

続いて半減曲線を書いて半減期t1/2ごとに残量が半分になっていく様子を説明しました.

また,

t1/2=0.693/k

となることを示し,t1/2からkが求まることを説明しました.

どうやって半減期を調べるのですか? 実際に観測はできないですよね?

半減期の長さだけ実験室で待っているのはムリですが,実験面で現実的な時間tにおけるCを計測し,C=C0e-ktを用いてkを求めることができます.ここからt1/2=0.693/kで半減期が求まります.

loge=log( )←見えないです.

こんど補足しましょう(たぶん).

板書が速い上に意味がわからない.理解する間もなくノートを書くはめになった.

たまにはそういう場面もあるのですよ,大学というところには.

核エネルギー利用の原理

原子核が壊変する際に飛び出す中性子をさらに別の原子核にぶつけていく操作の連鎖反応で核分裂を起こします.これを高速にやると原子爆弾,ゆっくりやれば原子力発電です.

放射能と生物 (p206)

電離放射線による生体への影響,ヒドロキシラジカル,防御機構,について説明しました.

続いて放射線量を量る際の単位としてSI単位系から[Bq],[Gy],[Sv]を,非SI系から[Ci],[rad],[rem]を紹介しました.

単位が多すぎてどれがどれだか混乱する.

今回は細かいことを暗記しなくて結構です.崩壊速度,エネルギー,生体への影響,の3つの軸から考える方法があるということが大事です.

RTコースは放射線に関する専門科目があるので,くわしくはそちらの方で学ぶことになるでしょう.CEコースは1年生の化学で扱う内容としては放射線にどのようなものがあり,それらがどこから生じるのか,どのような性質があるのか,までを知っていれば十分と考えます.

放射線の話,初めていろいろ知ったので試験まずいです.

放射線楽しかったです.

放射線についての授業はとても興味深かったです.

放放射線物理学と違った視点から学ぶことができて,とても興味深かったです.

放射線は難しいけど好きです.

その他のコメント

いつもより内容が濃い講義だった気がする.しんどかった.

色々と分かりやすい授業でした.

とりあえず3ヶ月ほどですがお疲れ様でした.非常に興味深い内容が多かったです.

特になし.

前期試験迫る

今月27日が前期試験です.これまで何度もアナウンスしてきたとおり,不合格にするための問題とか暗記力を問う問題は出題しません.基本的な考え方が身についていればOK.高校で化学を履修していてその内容をしっかり習得していれば合格ラインに達するレベルです.

テストが心配です.

大学に入って最初のテストというものは何だか不安なものなのかもしれません.計算問題は機械的に解くことができても,記述問題はどのように対処して良いのかわからない,という学生も何割かいるようです.

本日の午後に学生が一組,先日配布した模擬問題に出題されていた説明問題の答え方について質問にきました.指定された語句を使って化学の基本を説明させる問題だったのですが,どのように書いたら合格なのかがわからず不安とのことでした.出題する私としては語句を挙げておくことによって,それらをつなげれば自然に文章が仕上がり,その内容に誤りがなければOK,という程度に考えていたのですが,具体的な語句が挙げられていると,それが逆に難しく感じる場合もあるようです.

次回予告

次は9月16日です.第10章「水,溶液,コロイド」に進みます.9月のうちに教科書上巻を終わらせ,10月からは下巻の有機化学分野に進みたいところです.

リンク

www.tnojima.net
www.tnojima.net