Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

(8)化学式と化学反応式II

出席25名(出席シートの枚数).前回と同人数.今回は「熱」が出て来るところです.履修者41名のうち欠席している16名は「吸熱反応」と「発熱反応」を区別できているでしょうか.

今回は解説を50分程度で終わらせ,残りをフルに問題演習と解凍に充てました.しかし十分な時間が確保できたとは言えず,熱に関する演習時間が不足した感じです.

前回のコメントへの回答

前回の出席カードの自由記入欄に書かれていたコメントへの回答.

化学反応式の量的計算

前回の復習になります.化学反応式からは反応に関わる分子の分子数,質量,気体の場合の体積,といった情報を得ることができます.ここでは係数の比に着目することがポイントです.

反応熱

化学反応や状態変化には熱の出入りが伴います.熱の発生を伴う場合は発熱反応,吸収を伴う場合は吸熱反応となります.

熱を定量的に論じるためには熱量という物理量を用います.単位は[J]です.たとえば水の温度を上昇させるために必要な熱量を求めるためには以下の計算を行います.

熱量[J]=4.18[J/g・℃]×水の質量[g]×水の温度変化[℃]

熱化学方程式

化学反応式に反応熱を書き加えたものです.たとえば水素H2の燃焼反応は以下のように表されます.

H2(気) + (1/2)O2(気) = H2O(液) + 286 kJ

反応熱の種類

上記の「+286 KJ」は燃焼熱です.1 molの物質が完全燃焼する際に発生する熱量です.他に,1 molの物質が融解する時に吸収される「融解熱」,1 molの蒸発するときに吸収される「蒸発熱」,1 molの物質を多量の水に溶解させる際に吸収される「溶解熱」,酸と塩基から1 molの水が生じる中和反応で吸収される「中和熱」,成分元素の単体から1 molの物質が生成される際に発生または吸収される「生成熱」があります.

ヘスの法則

物質の変化に伴う熱の出入りの総量は変化の過程に無関係,という法則です.新宿から東京までJRに乗って行く場合,池袋を通っても渋谷を通っても,あるいは中央線でショートカットしても料金が同じなのと似ています.

この法則を用いると,実測困難な反応熱を求めることができます.

反応熱 = (生成物の生成熱の総和) - (反応物の生成熱の総和)

この関係と,すでにわかっている各種物質の生成熱を用いて,実測困難な物質の生成熱を求めることができます.反応に伴って混合物が生じてしまう場合に便利です.

出席カードの自由記入欄から

質問◎5.の(4)はどうして燃焼熱ではないのですか?

この問題は以下のようなものです.

(1/2)N2(気) + (1/2)O2(気) = NO(気) - 90.3 kJ

ますここで反応物N2およびO2の係数が(1/2)になっていることに注目しましょう.もしもN2の燃焼熱だったら「1 molのN2」に着目して式を立てているはずです.ここでは「1 molのNO(気)」が生成するように式の係数が合わせてあります.つまりこれは生成熱です.

この授業で学んだ計算や法則を繰り返し練習できるような問題集があったらおしえて下さい.

高校生向けの化学計算問題集がよいでしょう.書店で売っている一般的なものでOKです.

5.の反応熱を4つの種類に分ける所が全く分からなかった.どんな所をヒントに分けるのですか?

溶解熱,中和熱,燃焼熱,生成熱,に分類する問題.まずその反応がどのような反応なのかを確認します.次に何に着目して式が立てられているのかを確認します.燃焼熱と生成熱を区別するに際しては,係数が「1」になっているのがどの物質かを確認しましょう.

有効数字がわかりません.

化学要習では有効数字の取り扱いに関して指定をしません.今回は無用にケタが増えないよう丸め込んだだけです.

前回の授業の内容は大問3でわかるようになりました.大問6は今回できませんでしたが,思い出すことが出来たので,次この問題が出たら,解けると思います.

まずはモルで考えることです.続いてモルを別の物理量に変換します.変換といっても変換先は質量(分子量や式量を使う),粒子数(アボガドロ数を使う),気体の体積(22.4 L)くらいに限られています.「モルからモルへ計算して変換」をまもればOK.

まだ係数をあわせるのが苦手です.でも前よりはできるようになりました.6番が解けなかったのでもう一度解いてみようと思いました.

係数あわせは慣れです.高校低学年数学レベルの計算力で済みます.まずは問題を解いてみましょう.

次回予告

第9章「酸と塩基I」に進みます.

2009年度化学要習

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