Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

(2)原子の構造

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出席者数41名.受講生の入れ替わりがあり*1,先週より1名増えました.今回は原子の中身について考えました.原子を解体すると電子,陽子,中性子,になります.これらの組み合わせが変わると元素の種類が変わります.

キーワード→原子核,電子,陽子,中性子,原子番号,質量数,同位体,電子殻,価電子,閉殻,イオン

「同位体」と「同素体」(前回登場.教科書p2)を間違えないように!

コメントと質問と回答

出席カードにコメントや質問を書いてもらっています.

周期表を縦に見ると物質の性質に共通するところがあるとのことですが,それがよくわかりません.

周期表は性質の似た元素が縦に並ぶようなレイアウトになっています.たとえば一番左側の縦一列は,どれも+1価のイオンになりやすい性質を持っています.Li,Na,K,Rb,Scはいずれも水と激しく反応する金属です.

一方,一番右側の縦一列は化学的に非常に安定で,化学反応を(一部の例外を除いて)起こさないガス(希ガス)です.

周期表で水素とヘリウムはなんであいてるんですか?

ヘリウムHeも閉殻構造もったガスなので,同じような性質を持ったNe,Ar,Kr,Xeの上にのっかっているのです.

周期表については来週の授業で扱います.

N殻のつづきもあるんですか?

あります.K,L,M,N,O,Pと続きます.

なお,Aから始まらずKから始まっているのは,ずっと昔にK殻より内側にも電子殻が発見されるかもしれないと考えられていたからです.発見された際にはAからJまでを割り当てれば良いという考えです.しかしそのような殻は存在しないことが今ではわかっています.

授業ペースがちょうどよかったです

ゆっくり進むのでわかりやすくて集中して勉強できます.

化学要習は基礎化学の理解度向上を目的にしています.確実に理解できるように内容を絞ってありますので,この半年で確実にマスターしましょう.

分かりやすく教えていただいてありがとうございました!

とてもわかりやすかった.わからなくなったらちゃんと質問をするようにしたい

質問するのは良いことです.手を挙げて質問することに抵抗のある方は出席シートに記入してもらえれば,次回の講義の際に(たぶん)お答えします.また,教養図書館3階の学習支援室もご利用ください.

もう少し難しくしてもいいかもしれません

今は低速走行中ですが,これから先,少し内容が詰まって来るところもあります.いましばらくごしんぼうください.

電子殻への電子の収まり方についての質問

今回,希ガスではもっとも外側の電子殻がフルに埋まった状態になる,という説明をしました.あまり良い説明ではないのですが,化学要習の扱う範囲は高校化学までなので,この程度の説明にしておかないと先に進むことができないのです.ヘリウムHeは2個,ネオンNeは8個,アルゴンArも8個,という具合に電子が収まって安定な状態になる,という説明です.

その一方でK殻には2個,L殻には8個,M殻には18個までの電子が収まる,という説明もしました.「それではアルゴンArが安定だという説明は成り立たないのではないでしょうか」,という質問をして来た学生が1名いました.

電子殻の話と軌道の話は少々ややこしいところがあります.何かよい説明がないだろうかと本日,いろいろな書物をひっくり返して見た結果,次のようなものにぶつかりました(左巻建男 編著,「新しい高校化学の教科書」,2006年,講談社,ISBN4-06-057508-6).

3階(M殻)の定員は18名だが,この階の入り方は少しばかり複雑だ.2階(L殻)同様8名まではすぐに入れるのだが,次の2名はその上の4階(N殻)に入る.その後,再び3階にもどり9,10,11,・・・・,18個となる.

この,まず8個が収まった状態,というのがArの電子配置ということになります.

新しい高校化学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

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受講者の所属コース

医療衛生学部,海洋生命科学部,看護学部,獣医学部.まさにuniversity.

名なしさん

提出してもらったレポートのなかに,1名,学籍番号も名前も書かれていないものがありました.これが単位認定に際して致命的になるということはありませんが,今後は名前の書き忘れをしないよう注意してください*2

次回予告

4月28日,第3章「元素の周期表」に進みます.

前回の記録

*1:同じ内容のものを1週間に5コース開講していおり,それらの中から都合の良い時間帯のものを選んでもらうことになっています.

*2:次回の講義で注意を促します