Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

大学1年生の化学で使う教科書として書いた「はじめて学ぶ化学」が発売されました.

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はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学

このたび,化学を専攻「しない」大学1年生を読者に想定した化学の教科書を出版しました.執筆の機会を与えて下さった出版社は,京都にある化学書老舗の化学同人です.化学分野の第一線で活躍されている先生方の化学専門書と並んで化学雑誌やウェブサイトに広告を出していただいており,たいへん光栄です.

どのようにして始まったのか

執筆のお誘いはTwitterのDMでやってきました.2010年6月のことでした.それ以前から私は,講義録ブログの更新通知とか,問題の解き方ワンポイントレッスンとか,講義関連情報の紹介などを,Twitterで発信していました.それを,化学同人で編集のお仕事をされている方がチェックされていて,私の化学講義を元にした教科書を書いてみませんか,という連絡を下さったのです.

どこから手をつけたのか

執筆といってもゼロからのスタートにはなりませんでした.すでに医療系学生を対象に行った化学講義のノートがあったし,講義内容はブログとして公開してあったし,試験問題用に考えた計算問題もあったし,解説プリントもありました.そういう材料も利用しつつ,実際に私が組み立てている年間講義を文字にすれば教科書になると考えて,お引き受けしました.仕事の記録と蓄積は重要.

どんな流れだったのか

初めて編集担当の方にお会いしたのは11月でした.その際に具体的な作業の進め方を説明していただきました.まず企画書をいただき,それに対してコンテンツ案をつくって提出,原稿は翌年5月に最初の〆切,それから8月に改訂原稿の〆切,以降,ゲラをチェックしながら本として仕上げて行く,という流れでした.順調に進めば2012年の春には発売可能とのことでした*1

いつ書いていたのか

執筆には,実験研究の待ち時間とか,帰りの電車の中とか,夜中とか,そういう適当にまとまった時間を使いました*2.1日に進めるべき量を計算してGoogleカレンダーに作業予定表をつくり,それを前倒しして行く方法で書いて行きました.〆切厳守.

実感が湧いたのはいつか

原稿を書いているうちには,本当に私の原稿が書籍となって世に出るということに全く実感が湧きませんでした.今年になってから,2色刷りでレイアウトされ,イラストも組み込まれた校正用原稿を手にしたときにも,まだ,実感が湧きませんでした.その実感が湧いたのは,奥付の原稿を手にしたときでした.写真*3入りの簡潔な著者紹介欄と,発行日,出版社の住所などが記されただけの1枚の紙でしたが,これを見たときに,はじめて私は一冊の書籍の著者であることを理解しました.

発売が迫った頃にはどんなことがあったのか

最終原稿のチェックは,担当編集者の方と,3月末の日本化学会会場で行いました.日本化学会の展示会場には化学同人のブースも出店しており,会期中に「はじめて学ぶ化学」のチラシを用意していただいて,配布して頂きました.このチラシを見てくれた私の知り合いからは,「楽しみにしていますよ!」という励ましの声をいただきました.ありがとうございました.

今どうなっているのか

初版の印刷から配本までのステップは順調に進み,先週の終わりには北里大学内の教科書販売コーナーにも入荷しました.
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Amazonでは予約受付中となっています.すでに注文してくださった皆様,ありがとうございます.理工系書籍を扱う全国の書店での販売は今月終わりになりそうです*4
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著者は今どう感じているのか/考えているのか

著者だけでは本はできない

書籍の制作は著者一人で進めるものではありません.そのことを本当に感じる体験をさせていただきました.著者である私が担当したのは,「文章を紡ぐ」作業,「こんなイラストを描いてほしい」というリクエスト,それから,写真数枚の提供だけです.イラスト担当の方*5には,私が想像していたよりもすばらしいイラストを描いていただきました.カバーデザインも素敵です.
200ページを目標に執筆しているうちに大幅な文字数オーバー状態になってしまったのですが,担当編集者の方からは文字数を減らす上手な方法とか,マージンに流しこんだ方が良い箇所とかを逐一提案していただき,私自身が何らかの妥協をすることなく,目標ページ数付近に収めることができました*6

インフラとしてのSNSがなければ完成しなかった

全15章の内容には,これまでに北里大学で医療工学科および看護学科の1年生を担当してきた経験が十分に反映されています.彼らからは,2年生以降に進級してから,1年生で学んだ内容がどのように専門科目とつながっているのか,役だっているのかを教えてもらいました.そこにはTwitterというインフラがありました.また,日頃TwitterやFacebookでつながっている全国の教員,技術者,研究者,学生のみなさまから頂いてきたアイデアやアドバイスも反映されています.
みなさまにお礼申し上げます.

結びのことば

こうしてできあがった「はじめて学ぶ化学」は,2012年度の医療工学科および看護学科の化学講義テキストとしての使用開始に間に合いました*7.次の私の使命は,今回世に送り出した教科書を用いて,理想的な化学講義を展開して行くことです.「はじめて学ぶ化学」をご覧になってお気づきになった点がありましたら,私宛にご一報頂ければ幸いです.よろしくお願いいたします.

章末問題解答と正誤表

本書の章末問題は以下のURLで公開されています.また,本書の正誤表もあわせてここで公開されています.

このブログを書いている人

追記:ブログでの紹介(1)

化学系ブログとして有名な「有機化学美術館・分館」でも今回の出版に至る経緯を簡潔に紹介していただきました.

たくさんの方からTwitterやFacebookで「はじめて学ぶ化学」のことを紹介していただいています.どうもありがとうございます.

追記:ブログでの紹介(2)

北里大学獣医学部食品機能安全学研究室のブログでも紹介していただきました.

追記:全国の大学図書館でご覧いただけます

追記:Twitterでの紹介

*1:実際にそうなりました.

*2:平日の昼間はイロイロな人がランダムアクセスしてくるので執筆には適していません.

*3:学生が撮ってくれた写真を使っています.

*4:出版社では4月26日を計画しています.

*5:まだお会いしたことがありません.

*6:たとえば,化学反応式の係数あわせや,濃縮液の混合と希釈についての濃度計算など,数ページにわたって途中計算を説明している箇所があります.思い切ってカットする可能性も考えましたが,こうした計算を苦手としたまま大学に入学してくる学生が少なからずいる現状を考えて,これ以上親切に書かなくても良い,というレベルまで計算式を書いてあります.そういう著者のこだわりを,担当編集者の方はよく理解してくださいました.

*7:講義第3回目までは教科書がなくても特に不自由しない内容です.